ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル
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カレントテラピー 37-2 サンプル
8 Current Therapy 2019 Vol.37 No.2120Ⅰ はじめにセンチネルリンパ節(SLN)は,癌の領域リンパ節のなかで転移が最初に起こるリンパ節であるとされ,同リンパ節に転移がなければ,理論的には,周囲のリンパ節に転移を起こしていないものとみなして,不要な腋窩リンパ節郭清を防ぐ目的で考案された手技である1)~3).近年,SLN生検は,腋窩リンパ節郭清に代わり正確な進行度診断をもたらす手術手技として急速に普及し,世界的にも標準治療として確実に定着している4),5).しかしながら,わが国では長らく保険適用が得られず,2008年3月までは,「先進医療(評価療養)」として行われてきた.さらに,同年4月からは,高度医療評価制度のなかに組み込まれ,「多施設共同臨床確認試験」として,新たに日本乳癌学会認定施設のなかから参加希望施設を募り実施された.本試験は,SLN生検の安全性,同定率に関する認容性試験であり,日本で実施可能な色素,アイソトープでのSLN生検の安全性ならびに同定率が欧米の成績と差がないことを検証し,早期保険適用を目指したものであった.以下に,その概要を示す6).* 昭和大学医学部外科学講座乳腺外科学部門教授先進医療の現況と展望─ 先進医療制度の今後の展望乳癌センチネルリンパ節生検―先進医療から保険収載まで―中村清吾*センチネルリンパ節(SLN)は,癌の領域リンパ節のなかで転移が最初に起こるリンパ節であるとされ,センチネルリンパ節生検は,同リンパ節に転移がなければ,理論的には,周囲のリンパ節には転移を起こしていないものとみなして,不要な腋窩リンパ節郭清を防ぐ目的で考案された手技である.しかしながら,わが国では,保険適用が得られず,2008年3月までは,「先進医療(評価療養)」として行われてきた.そこで,保険収載を目指して,同年4月からは,新たに創設された高度医療評価制度のなかに組み込まれ,「多施設共同臨床確認試験」として,日本乳癌学会認定施設のなかから参加希望施設を募り実施された.本試験は,SLN生検の安全性,同定率に関する認容性試験であり,日本で実施可能な色素,アイソトープでのSLN生検の安全性ならびに同定率が欧米の成績と差がないことを検証した.最終登録数は,予想をはるかに上回る10,000例を超え,全体の同定率は98.4%,方法別では色素法単独97.6%,RI法単独97.1%,色素・RI併用99.0%と,欧米論文から設定した同定率93%を上回った.また,色素によるgradeⅢ,Ⅳの重篤な副作用は全く認められず,gradeⅠに相当する一過性の皮疹を3例(0.02%)認めるのみであった.その結果,2009年9月に色素とRIの保険適用拡大に関する薬事承認が得られ,翌年の2010年4月に,SLN生検の手技も保険適用となった.