ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル
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カレントテラピー 37-2 サンプル
Current Therapy 2019 Vol.37 No.2 77制度解説189療技術の研究開発は,日本においては研究者に対して比較的裁量が与えられた環境下で行うことができるようになっている.しかし,一方で医療技術の研究開発は多くの患者の参加を抜きには成立しないものであり,これらを完全に保険診療の外で行うことは理屈のうえでは不可能ではないものの,現実には金銭的な面・管理面等で相当に困難である.旧先進医療制度・高度医療評価制度,あるいは,現行の先進医療制度は,一連の医療行為のうちの一部について保険制度下での実施を認めることで,このような金銭的な問題の解決(ないしは負担の軽減化)に寄与する可能性がある.Ⅲ 今後の課題現在の先進医療制度は1984年(昭和59年)に導入された高度先進医療制度の流れを汲むものである.しかし,高度先進医療と,旧先進医療制度・高度医療評価制度や現行の先進医療制度にはその対象とする医療技術に大きな違いがあり,高度先進医療制度下では認められていなかった研究開発段階のものが現在は対象とされている.2008年に設けられた高度医療評価制度(2012年10月の先進医療・高度医療の統合時に設けられた現行の先進医療Bという区分とその対象に相当する)では,薬事法(当時)上未承認・適応外である医薬品や医療機器を用いた医療技術が対象となり,旧高度先進医療制度では研究開発段階のものを除外するとしていた方針からの大きな転換があった.これは,医療保険制度のなかに,将来,保険制度に導入される可能性がある研究開発段階の新たな医療技術の評価を行う仕組みを設けたという意味で大きな変化である.もちろん医薬品等の治験に関しては1996年より旧特定療養費制度の対象となってはいたものの,新たな医療技術は前述の通り薬機法の枠内のみに留まるものではない.新規医療技術を評価する臨床試験を行う場合,既存の保険診療で認められた部分まで全額自己負担になってしまうという問題は,いわゆる「混合診療」問題のひとつであるが,実はこの問題は日本の国民皆保険制度特有のものではなく,欧米にも存在する.例えば米国においては,従来,臨床試験に参加した患者に対して,公的医療保険・民間医療保険を問わず本邦と同様の問題が生じていたため,公的医療保険制度で日本の保険外併用療養費制度や先進医療制度に類似した仕組みが2000年に設けられ,さらに民間医療保険に対する州政府レベルの施策として臨床試験に参加する患者がすでに保険診療下で実施できる部分を保険でカバーする仕組みを設けることを求める対策もとられてきた3),4).すなわち,研究開発段階にある医療技術の評価を日常診療の一部として行う場合,その費用負担を誰が,どこまでの範囲を,どのように行うか,といった課題は,本邦の国民皆保険制度特有の課題ではなく,広く一般に医療保険制度・医療制度に内包された課題である.現行制度は,特に先進医療Bについて,申請から厚生労働大臣告示に至るまでの評価に時間を要するとの批判がなされることがあり,先進医療制度の枠組みではなく医師・研究者が自由に行うことを認めるべきという意見もある.特に,2018年から施行されている臨床研究法の下で実施される特定臨床研究については,法律に基づく審査・管理がなされていることから,今後この点についてはさらに議論が深まっていくものと予想される.ただし,認定臨床研究審査委員会による特定臨床研究の審査は,研究が評価対象としている医療技術に関する将来の保険診療導入の観点からの妥当性,研究計画上保険診療導入の可否を判断するために必要となる評価方法が取られているか否かおよびその妥当性等については必ずしも検討されていない.これらの論点は,従来の臨床試験の方法論ではあまり注目されてこなかった事項であり,制度論を議論する際に取りこぼされがちである.しかしながら,臨床研究は科学的真理の探究のみを目的として実施されるわけではなく,治療開発の観点からは新規医療技術の医療上の有用性の評価や社会的な影響を無視することはできない.今後,先進医療制度を含む新規医療技術の開発・評価に関わる制度のあり方について議論がなされる際に,臨床研究の倫理性・科学性という切り口に加