ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル

ページ
22/36

このページは カレントテラピー 37-2 サンプル の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

カレントテラピー 37-2 サンプル

62 Current Therapy 2019 Vol.37 No.2174Ⅰ 患者申出療養に至る背景チオテパはアルキル化剤で,わが国でもテスパミンRという商品名で1959年に薬価収載され,使用されていた薬剤である.ところが,2008年に原薬製造会社の設備老朽化を理由に製造が中止されることとなり,国内での使用ができない状態となっていた.中枢神経への移行がよいことから中枢神経系の腫瘍や造血幹細胞移植の前治療として使用されてきた経緯があり,代替薬がないことから,日本血液学会,日本造血細胞移植学会,日本リンパ網内系学会から医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に,自家または同種造血幹細胞移植の前治療としてのチオテパの承認についての要望書が出されていた1)~3).2016年7月,当院小児科医師から,髄芽腫の再発の患者で,自家末梢血幹細胞移植の前治療としてチオテパ使用の希望があり,患者申出療養の対象とならないかとの相談を受けた.まず,治験あるいは先進医療という既存の制度に参加できないかを調べたところ(注:治験,先進医療など,既存の制度で実施できないかをまず検討することとされているため.図1参照4)),その段階では正確な開発時期は未定であったが,国内でチオテパの新しい製剤の企業治験が計画されていることが判明した.当院は治験参加予定施設となっていなかったため,治験実施企業と連絡を取り,当該患者が治験に参加できないか,参加できない場合には薬剤提供が可能であるかなどについて相談を行ったが,新たに参加施設として当院を追加することや治験外での薬剤提供は難しいとの*1 名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部病院講師*2 名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部部長・化学療法部教授先進医療の現況と展望─ 先進医療制度の今後の展望チオテパを用いた自家末梢血幹細胞移植療法西脇聡史*1・安藤雄一*2かつてわが国でも使用されていたが,製造中止のため使用できなくなっていたチオテパを海外の製薬会社から無償提供を受ける形で患者申出療養を実施した.臨床研究として実施する必要があるため,19歳以下の再発難治性の髄芽腫,原始神経外胚葉腫瘍(primitive neuroectodermaltumor:PNET),非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(atypical teratoid rhabdoid tumor:ATRT)を対象とし,カルボプラチン,チオテパ,エトポシドを自家末梢血幹細胞移植の前治療として使用,自家末梢血幹細胞移植100日以内の全死亡率を主要評価項目として,チオテパを含む大量化学療法+自家末梢血幹細胞移植の安全性と効果を検討することとした.初めの相談から告示まで約10カ月間かかり,特に臨床研究計画書の作成には約5カ月間を要したが,無事に申出を行った患者に投与することができた.制度上の制約などもあり対象となる患者は多くはないと思われ,また臨床研究中核病院の負担も大きいが,うまく実施にたどり着いた例であり,今後の参考になれば幸いである.