ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル

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カレントテラピー 37-2 サンプル

56 Current Therapy 2019 Vol.37 No.2168Ⅰ はじめに患者のゲノム情報を,次世代シークエンサーを用いて「検査」として解析し,診療に活用する「ゲノム医療」の実装化に向けた動きが活発になっている.従来のコンパニオン診断薬として,ある特定の遺伝子異常の有無を調べる検査とは異なり,次世代シークエンサーを用いた多遺伝子パネル検査は,結果として得られた各遺伝子異常に対して解釈が必要となる.結果の正しい解釈と活用に向けたゲノム医療提供体制整備の一環として2018年4月に厚生労働省により,全国11カ所のゲノム医療中核拠点病院とそれに紐づく連携病院が指定された.国立がん研究センター中央病院では,このゲノム医療中核拠点病院と連携病院のゲノム医療提供体制を用いた国内初のゲノム医療としての先進医療である「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」を2018年4月に開始した.本稿では,ゲノム医療の実現に向けたゲノム医療中核拠点病院と連携病院の役割を踏まえながら,「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」について紹介する.Ⅱ ゲノム医療中核拠点病院と連携病院について1 要件と役割ゲノム医療の流れと,各工程においてゲノム医療中核拠点病院と連携病院が求められる要件を図1に* 国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院病理・臨床検査科先進医療の現況と展望─ 先進医療制度の今後の展望個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査角南久仁子*多遺伝子パネル検査を用いたゲノム医療の実装化に向けた動きが活発になっている.当院では,Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response(TOP-GEAR)と題して,日常診療で汎用されるホルマリン固定パラフィン包埋検体を用いて114個のがん関連遺伝子を解析できる多遺伝子パネル検査であるNCCオンコパネルを用いたクリニカルシークエンスプロジェクトを2013年より行ってきた.2018年3月までで623例の解析を行い,過半数の症例にactionableな遺伝子異常が検出され,2017年5月までに登録された187例では25例(13%)で遺伝子異常に合致した治療薬が投与されている.2018年4月からは,国内初のゲノム医療としての先進医療である「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」を開始した.多施設共同試験であり,がんゲノム中核拠点病院と連携病院とのエキスパートパネルを通した連携体制の構築のモデルケースになることを目指しながら,保険収載後の運用を視野に入れた課題解決を行っている.