ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル
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カレントテラピー 37-2 サンプル
Current Therapy 2019 Vol.37 No.2 39151コラーゲンやポリウレタン素材が挙げられる.コラーゲン素材のインプラントは牛アキレス腱由来のI型コラーゲンのトロポコラーゲンで構成されており,70~400μmの連通ポア構造をもち生体内で12~18カ月存在することが確認されており,移植によるscaffold内への細胞誘導・組織再生が期待されている6),7).ヒトへの使用では,術後10年時点での臨床成績は概ね改善するが,免疫反応やインプラント破損による再手術率が10%程度と報告されている8),9).ポリウレタンとポリカプロラクトンによって生成された人工材料も,150~355μmの連通ポア構造をもつ吸収性の合成ポリマーであり,生体内では5年程度存在する10).術後2~6年成績では臨床症状は概ね改善するが関節軟骨損傷や半月板逸脱が見られ11),インプラントの破損・脱転による再手術率は17~33%と報告されており12),これはインプラントの吸収が遅く,関節内に長期存在することも一因と考えられる.これらの人工材料は,正常半月板と生体力学的特性が異なっており13),荷重分散機能が不十分なため軟骨損傷のリスクがあると考えられる.1990年代後半に本邦でもコラーゲン素材のインプラントによる半月板修復術の治験が行われたが,全例にてインプラントが機能せず,再鏡視でインプラントの吸収や損傷が見られた.さらに,炎症性反応のために水腫が継続し,除去した症例が1例あり,治験段階で中止となった14).以上のことより,新規に開発する人工材料は,細胞が浸潤し機能するscaffoldとしての役割と,生体力学的特性が正常半月板と同様であること,さらに,免疫反応を呈さないことが求められた.Ⅲ アテロコラーゲン半月板補填材(ACMS)の開発われわれは,臨床使用実績があり安全性が確認されているアテロコラーゲンを用いて,新規に半月板補填材(atelocollagen meniscus substitute:ACMS)を開発した.アテロコラーゲンは,ウシ真皮由来のⅠ型コラーゲンのトロポコラーゲンを酵素処理して抗原性のあるテロペプチドを除去して作成され,このアミノ酸配列はヒトと動物間でも高く保存されているため免疫原性は低い.このアテロコラーゲン水溶性ゲルを凍結乾燥して得られたコラーゲンスポンジに,還元架橋剤にて架橋を導入して生体力学的強度をもたせた.臨床使用で用いているACMSは直径30mm・厚さ5mmの円板状の形態で,10%程度の圧縮変形時に20~30kPa程度の圧縮応力であり,半月板と同程度の生体力学的特性の剛性をもつ.また,30~200μmの連通ポア構造をもつため,細胞が本品の奥まで浸潤して接着し,細胞外マトリックスを形成する足場となり得る15)~18()図1).医薬品医療機器総合機構(PMDA)との医療機器戦略相談にて,非臨床安全性試験において,この素材の埋植試験,Scaffold onlymeniscus(femur side)Meniscus(tibial side)005101520253035404510 20Strain(%)1cm 500μmStress(kPa)30a b半月板と同程度であった.図1ACMSa:30~200μmの連通ポア構造を呈する.b:軸方向の圧縮応力試験において,ACMSが10%以上圧縮されるのに要する圧縮力が正常半月板と同程度であった.〔参考文献18)より転載〕