カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 19NAFLD/NASHの病態19いる(図3).肥満に伴うレプチン産生亢進やアディポネクチン産生低下などのアディポサイトカイン発現バランスの異常はインスリン抵抗性を増強する11).アディポカインは肝臓の代謝調節のみならず,炎症や線維化,癌化のプロセスにおいても重要な役割を演じていることが示唆されている.肝臓においても,レプチンはKupffer細胞の活性化増強12)や肝線維化促進因子としての作用13)が明らかにされている一方,アディポネクチンは保護的に作用することが実験的に証明されている14).Ⅶ 腸内マイクロバイオームとNAFLD/NASH近年の腸内細菌研究の進歩により,メタボリックシンドロームを含む代謝性病態と腸内細菌の関連が脚光を浴びている.肥満者では腸内細菌叢のバランスが異なっており,腸内細菌の遺伝子発現パターンが変化していることが明らかにされ,腸内細菌の菌体成分およびその代謝産物による自然免疫系の活性化や,腸内細菌の代謝産物によるホストの代謝機構調節などが肥満関連のさまざまな病態に関与していると考えられている15).NASHではアルコール性肝障害と同様に腸内細菌由来のエンドトキシン(LPS)の門脈血中への流入に伴う肝マクロファージ(Kupffer細胞)の活性化が生じ,肝障害進展に寄与していることが想定されている(図4).NASHでは小腸内細菌異常増殖(small intestinal bacterial overgrowth:SIBO)を生じているとの報告もあり,腸内細菌が産生するエタノールが腸管透過性亢進に寄与している可能性がある16).LPSはTLR4およびCD14により認識され,マクロファージを活性化させることによりM1優位のサイトカイン産生,NADPH oxidaseを介した活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)などを惹起して肝細胞傷害を生じる.TLRは細菌やウイルスなどの構成成分(pathogen -associated molecularpatterns:PAMPs)を認識するのみならず,障害を受けた細胞由来の変性したDNA,RNA,脂質系分子など(damage - associated molecular pat-Adipocytes PPAR-γFFAresistinTNF-αPAI-1angiotensinogenleptinvisfatinadiponectinInsulinresistanceInsulinsensitivityatherosclerosisHTMetabolic Syndrome 図3アディポカインのバランスと病態