カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 77NAFLDとNASHの現況と展望― 国民病となったNAFLD/NASHの疾患概念の変遷と問題点―企画西武鉄道健康支援センター/前東京女子医科大学消化器内科教授橋本悦子Global obesity pandemicとなり,肥満対策が喫緊の課題となった.内臓脂肪型肥満を基盤として発症するメタボリック症候群の肝病変が非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)である.大規模疫学調査では世界の約25%の成人がNAFLDに罹患していると報告された.わが国の頻度に関しては,成人男性では20~40%,女性では閉経後に急増し20~30%で,最も高頻度の肝疾患となった.脂肪肝とは肝細胞に余剰な脂肪が溜まった状態で,一部の症例では,脂肪変性を基盤に壊死炎症性変化をきたし,線維化が進行して肝硬変となり,肝発癌も稀でない.脂肪肝の血液診断マーカーはなく超音波検査などの画像検査で診断される.肝臓病学では脂肪肝は,アルコール性とNAFLDに大別され,アルコール性肝障害をきたすほどの飲酒歴のない脂肪肝の総称がNAFLDで,主な病因は肥満によるインスリン抵抗性である.80~90%のNAFLDは病的意義のほとんどない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)であるが,10~20%は肝硬変や肝細胞癌に進行し得る非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)である.NASHは肝組織で診断されるが,肝組織検査は一般的な検査ではなく,実臨床では,NAFLDとして扱われる.糖尿病などの生活習慣病はNAFLDの発症リスク因子であるとともに,NAFLDは,糖尿病や心血管イベントの発症リスク因子で,両者は悪循環を呈する.NAFLDの死因は,悪性腫瘍,心血管イベント,そして,肝不全と続き,全身疾患としてとらえることが必要である.高頻度のNAFLDは,全診療科で遭遇する病態で,多くのNAFLDのなかから重症例を拾い上げる必要がある.肝疾患としての重症度は,脂肪変性の多寡ではなく,肝線維化の進行による.トランスアミナーゼは,線維化重症度判定の指標とはならず,血小板値,血清線維化マーカー,FIB-4 indexなどのスコアで判断する.線維化進行例と診断された場合は,専門医への紹介が必要である.治療に関しては,食事・運動療法による体重コントロールが基本である.約7%の減量でNASHはほぼ治癒すると報告されている.なお,body mass indexが正常であっても,内臓脂肪型肥満例もあり食事・運動療法は基本である.また,筋肉量の減少したサルコペニアもNAFLD発症の危険因子で注意を要する.現時点では,減量に勝る治療法はなく,抗炎症薬や線維化改善薬などがphase Ⅲ臨床試験中である.食育を含めた国を挙げた肥満対策が必要である.本特集では,それぞれの領域の第一人者にご執筆を頂いた.NAFLD/NASHの診療の一助になれば幸いである.エディトリアル