カレントテラピー 37-1 サンプル

カレントテラピー 37-1 サンプル page 21/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 37-1 サンプル の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 37-1 サンプル

Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 75NAFLD/NASHの治療75リーラジカルはNASH進展,および発癌にも非常に大きな役割を果たしている.ビタミンE(α-トコフェロール)はフリーラジカルのこれらの標的への攻撃に拮抗的に働き,脂質ペルオキシラジカルを消去し,脂質の連鎖的酸化を阻止することによりNASH進展を防ぐと考えられている.また,ほかに抗酸化物質として知られるビタミンC(アスコルビン酸)と異なり脂溶性であるため生体膜など疎水性の高い部位に分布し,その周囲で発生したフリーラジカルの作用を効率よく抑えることができると考えられている.これらを踏まえ,ビタミンEを使用した多くの研究が行われている.2010年に報告されたピオグリタゾン,ビタミンE,プラセボを比較したRCTでは,96週のピオグリタゾン(30mg/日),ビタミンE(800IU/日)を投与した群はいずれもプラセボに比べてAST,ALTが有意に改善し,組織学的にも肝脂肪化,炎症が改善したとしている.しかし,この研究ではいずれの薬剤群でも線維化の改善は認められていない16).ほかにも多くの報告がされており,研究により薬剤使用量,併用薬の有無,アウトカムが異なるため,それぞれの研究結果を比較することは困難であるが,ビタミンE投与はNASH患者の肝酵素値を改善させ,組織学的に肝脂肪化,炎症を改善させるが,肝の線維化には目立った効果がないとまとめることができる.また,8~17歳の小児,若年者を対象にしたRCTであるTONIC試験では,組織学的に診断されたNAFLDに対するビタミンE(800IU/日),メトホルミン(1,000mg/日)の有効性が試され,96週の投与でビタミンE群は肝組織のバルーニング,NAFLD activity scoreをプラセボに比して有意に改善したことを報告している17).しかし,この研究ではprimary endpointであった長期にわたるALTの低下はビタミンE投与で得られなかったため,結論はやや否定的なものとなっている.NASHに対するビタミンEの効果が期待されるものの,過剰投与,長期投与に関しては注意が必要である.800IU以上の投与で死亡率が高くなったことを示唆するメタ解析が行われているが18),解析の不備を指摘するものや,ビタミンE投与で死亡率には変化がなかったというメタ解析も報告されている.これらの結果より本邦のガイドラインにおいては薬剤本邦ガイドライン欧ガイドライン米ガイダンスメトホルミン根拠に乏しく,投与しないことを提案.記載なし.成人NASHの治療には推奨されない.ピオグリタゾンインスリン抵抗性を有するNASH症例に有益性がある.2型糖尿病を有するNASHに使用可能.NASHを組織学的に改善する.GLP-1受容体作動薬記載なし. 現時点では時期尚早.肝組織を改善する研究結果を記載.HMG-CoA還元酵素阻害薬高脂血症を有する症例では肝機能を改善させるため投与を提案.心血管リスクを下げるが,肝病変に対する効果は不明.NAFLD/NASHでも脂質異常に使用可能.エゼチミブ高脂血症を有する症例では肝機能を改善させるため投与を提案.否定的研究結果を記載. 記載なし.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬高血圧を有する症例では肝機能と肝組織を改善させるため投与を提案.記載なし. 記載なし.ビタミンENASH患者で血液検査値,肝組織を改善させるため投与を提案.NASHに単独もしくはピオグリタゾン併用で使用可能.NASHの組織学的改善が期待されるが,糖尿病合併例,肝硬変では非推奨.UDCA通常量での効果は否定的であり,投与しないことを提案.組織学的改善は否定的.NAFLD/NASHへの投与は推奨されない.表NAFLD/NASHの薬物治療に関する考え方の比較〔参考文献1)~3)より引用改変〕