カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 7373スリン抵抗性があっても阻害されない.肝細胞への脂肪の沈着にアディポカイン,腸内細菌由来のエンドトキシン,星細胞の活性化などさまざまな要因が作用しNASHへと進展していくと考えられている4).Ⅲ NAFLD/NASH治療の流れ肝生検により非アルコール性脂肪肝(nonalcoholicfatty liver:NAFL)と診断された症例では生活習慣の改善で経過観察となるが,肝生検未施行例,NASHと診断された例では積極的な介入が必要となる.フローチャートによると肥満症例では減量が第一の治療であるが,非肥満症例では糖尿病,脂質異常,高血圧等の基礎疾患の治療を行い,基礎疾患がない例ではビタミンEの投与が推奨されている.このフローチャートからはNAFLD/NASHに対する特異的な治療薬は現在のところ存在せず,NAFLDの主たる死因は心血管イベントであるため5),その抑制に重きを置いていることがみてとれる.欧米のガイドラインでも薬物治療はNASHと診断された症例に限って施行することが記載されており,本邦と同様のスタンスである.主な薬剤に対する日米欧それぞれのガイドラインの考え方について解説する.1 メトホルミンメトホルミンは欧米では糖尿病治療薬の第一選択薬として使用され,本邦でも使用が増加している.メトホルミンはミトコンドリアの呼吸鎖complex Iを阻害し,細胞内のAMP/ATP比を増加させる.これに伴いAMPキナーゼが活性化され,肝での糖新生が抑制されるだけでなく,脂肪酸の合成阻害と代謝促進(β酸化)が助長されるとされている.この作用機序からメトホルミンのNAFLD/NASHへの有効性が期待され,多くの研究が行われた6),7).しかし,メトホルミンがALTやインスリン抵抗性改善に有用であったとの一部の報告はあるものの,いずれの研究でも組織学的な改善は示されなかった.このため,本邦のガイドラインはメトホルミン(ビグアナイド)はNAFLD/NASHに対する特異的な治療としての有効性が期待できないと結論づけ,投与しないことを提案している(エビデンスレベルB).米国のガイダンスでも同様にメトホルミンはNASH治療に推奨されないとしている.欧州のガイドラインではメトホルミンが肝発癌を抑制する可能性を示唆しているが,いまだエビデンスに乏しいと記載している.これらの内容は,あくまでもNASHの特異的治療としてのメトホルミン使用を推奨しないということであり,NASHを合併した糖尿病での使用を否定するものではない.2 チアゾリジン誘導体チアゾリジン誘導体は核内受容体であるperoxisomeproliferator-activated receptorγ(PPARγ)のアゴニストとして作用し,大型の脂肪細胞を小型に分化させる.これにより肥大した脂肪細胞から分泌されるFFAやTNF-α,IL-6などの炎症性アディポカインが減少し,アディポネクチンの分泌量が増加することからインスリン抵抗性,脂質代謝異常,炎症機転を改善させる.ロシグリタゾンとピオグリタゾンが現在販売されているが,本邦ではピオグリタゾンのみが使用可能である.いくつかのランダム化比較試験(RCT),メタ解析により,ピオグリタゾンがNASHのALT値,肝組織像をプラセボに比して有意に改善したことが報告されている8),9).これらの結果より,本邦のガイドラインではピオグリタゾンは比較的短期間にNASHの肝機能,組織所見を改善するため,インスリン抵抗性を有するNASH症例への投与を提案している(エビデンスレベルA).米国ガイダンスでもピオグリタゾンは2型糖尿病の合併にかかわらず使用を考慮すべきとしているが,欧州のガイドラインでは糖尿病合併NASHへ使用可能とやや弱い推奨となっている.しかし,これらの基になるいずれの研究も短期間の観察であり,長期間の効果をみたエビデンスには乏しい.また,いずれのガイドラインでも長期使用に伴う心不全,体重増加,骨折には留意する必要があると注意喚起がされており,このため米国ガイダンスでは組織学的にNASHと診断されていないNAFLD症例には現時点では使用すべきでないとしている.3 GLP-1受容体作動薬インクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチ