カレントテラピー 37-1 サンプル

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40 Current Therapy 2019 Vol.37 No.140しておらず,各ガイドラインに記述されている薬物療法のステートメントについて表2に示す.抗酸化薬であるビタミンEは,肝酵素と肝組織の改善を認めるとして,いずれのガイドラインでもNASH患者への投与を提案している.本邦では対象はNASH患者全例としているが,欧米,アジアのガイドラインでは糖尿病や肝硬変を有しないNASH症例としている.ウルソデオキシコール酸(UDCA)はすべてに共通して推奨されていない.インスリン抵抗性改善薬のなかで最も汎用されているビグアナイド薬(メトホルミン)はNASHに対する治療としては推奨されていない.一方で,チアゾリン誘導体のピオグリタゾンはNASHに対する有用性が示されている.本邦のガイドラインではインスリン抵抗性を合併するNASHに投与を提案,欧州・アジアのガイドラインでは2型糖尿病を合併するNASHに使用可能とし,米国のガイダンスでは糖尿病の有無にかかわらず組織学的に証明されたNASHに推奨している.米国のガイダンスとアジアのガイドラインはGLP-1受容体作動薬について述べている.GLP-1受容体作動薬は体重減少をきたしNASHの改善が期待できるが,NASHの治療薬として推奨するにはデータの蓄積が不十分であるとしている.脂質異常改善薬については,スタチンは欧米では肝組織改善効果についてのエビデンスが不十分であるとし,脂質異常症を改善し心血管イベントの抑制を目的としている.本邦では高コレステロール血症を合併する症例に,米国は非代償性肝硬変症例を除いた脂質異常症を有する症例に推奨している.ω3脂肪酸については,欧米・アジアのガイドラインはNASHの治療薬としては推奨しておらず,本邦のガイドラインには記載されていない.降圧薬については,本邦のガイドラインではアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は肝機能と肝組織を改善するため,高血圧合併NASH症例に投与を提案している.他のガイドラインでは降圧薬の記述はない.米国のガイダンスとアジアのガイドラインは現在治験進行中の新規薬剤についても述べている.特に,FXRアゴニストであるオベチコール酸は,脂質合成低下,抗炎症,抗線維化作用が示されている薬剤で第Ⅲ相試験が進行中であるとし,現在のところ適応外の使用は推奨しないとしている.減量手術は,すべてのガイドラインで高度肥満を合併するNASH症例では組織学的改善も含めて効果があるとしている.本邦,米国のガイドラインでは,肝予備能が低下している肝硬変症例では行わないとしている.すべてのガイドラインで末期のNASH肝硬変は肝移植の適応であるとしている.欧米では肝移植の原因疾患の3位以内に位置している.アジアのガイドラインでは,移植前後の生活習慣の管理を行うべきとし,米国のガイダンスでは,NASH肝硬変患者は高率に心血管疾患を合併しているため,肝移植に際し確認を要するとしている.Ⅴ おわりに世界のNAFLD/NASHの診療ガイドラインについて概説した.すべてのガイドラインに共通して言えることは,NASHの予後規定因子は肝線維化であることから,肝線維化を伴うNASHの拾い上げを重要視し非侵襲的検査法に注目している.治療では,肝線維化を伴う症例や肝線維化進展のリスクが高い症例が肝特異的治療の適応とし,組織学的改善効果のある薬剤を推奨している.NAFLD/NASH診療における課題は,非侵襲的診断法とNASH治療法の確立である.今後のガイドラインもこれらに重点が置かれるのではないかと思われる.参考文献1)日本消化器病学会(編):NAFLD/NASH診療ガイドライン2014.南江堂,東京,20142)日本肝臓学会(編):NASH・NAFLDの診療ガイド2015.文光堂,東京,20153)Wong VW, Chan WK, Chitturi S, et al:Asia-Pacific WorkingParty on Non-alcoholic Fatty Liver Disease guidelines 2017-Part 1:Definition, risk factors and assessment. J GastroenterolHepatol 33:70-85, 20184)Chitturi S, Wong VW, Chan WK, et al:The Asia -PacificWorking Party on Non-alcoholic Fatty Liver Disease guide