カレントテラピー 36-9 サンプル page 9/28
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カレントテラピー 36-9 サンプル
12 Current Therapy 2018 Vol.36 No.9844は一次EGFR -TKI治療後の再生検が次治療決定のために必須となることを決定づけた試験としても重要である.AURA試験のpost hoc解析で治療効果は血漿T790M 陽性例と腫瘍組織でのT790M 陽性例で同様であったが,組織T790M 陽性症例の血漿T790M陽性感度は70%であった.これらの結果から血漿T790M 陰性の場合は組織検査でT790M 遺伝子変異の有無を再確認する必要がある.2 オシメルチニブと第一世代EGFR-TKIとの比較オシメルチニブは上記のEGFR -TKI既治療症例に対する効果だけでなく,EGFR -TKI未治療患者を対象に行われたFLAURA試験でもその効果が示された16()表1).FLAURA試験はEGFR遺伝子変異陽性(common mutation) に対する第一世代EGFR-TKI(ゲフィチニブもしくはエルロチニブ)とオシメルチニブの一次治療としての効果を比較したものである.無増悪生存期間中央値はオシメルチニブ群18.9カ月,第一世代EGFR-TKI群10.2カ月(ハザード比0.46,95%信頼区間0.37-0.57,p<0.0001)とオシメルチニブ群で有意な延長が示された.奏効率は両群で差はないもののオシメルチニブ群の奏効期間は第一世代EGFR -TKI群と比較して約2倍であった(17.2カ月 vs. 8.5カ月).オシメルチニブの治療効果は無症候性脳転移を有する症例でもみられ,無増悪生存期間の延長は脳転移がある症例でもない症例と同程度に良好であり,またオシメルチニブ群での新規脳転移発症頻度はエルロチニブ/ゲフィチニブ群のそれと比較して低かった(6% vs. 13%).毒性の全発現頻度はオシメルチニブとゲフィチニブで同等であったが,グレード3以上の毒性はオシメルチニブ群で少なく(18% vs. 28%),肝障害と皮膚毒性が特にオシメルチニブ群で低かった.本試験の結果からEGFR 遺伝子変異陽性肺癌に対するオシメルチニブの一次治療セッティングでの使用が本邦でも承認される見込みである(2018年7月時点).3 オシメルチニブに対する獲得耐性第一・二世代EGFR -TKI同様にオシメルチニブ使用症例も耐性を獲得する.耐性メカニズムとしてはC797S 変異,T790M 変異の喪失,L798I ,G796SとC797S/R およびL792F/H といったEGFR 遺伝子に関連するもの,その他にはRAS/RAF ,MEK ,PI3K ,JAK 経路の変異獲得やMET /HER2 /FGFR といった他の受容体型チロシンキナーゼの遺伝子増幅,組織学的転換などが報告されている6),7),17),18).オシメルチニブ耐性後の治療戦略は現在確立しておらず,EGFR 遺伝子変異陰性患者への治療選択肢が検討されることとなる.Ⅴ その他EGFR - TKIの第Ⅲ相試験の多くはuncommonmutationが除外されている.本稿ではこれらに対する治療戦略の詳細は割愛するが,T790M とエクソン20の挿入変異以外のuncommon mutationに対するEGFR-TKIの奏効率は約50~70%とされており,なかでもアファチニブは第一世代EGFR -TKIより奏効率が高いことが報告されている19),20).しかし,十分な症例数で前向きに検討された結果ではないことから,現在『肺癌診療ガイドライン』ではuncommonmutationに対するEGFR -TKIの使用推奨度は2Cとなっていることに留意する必要がある(エクソン20挿入変異は行わないように推奨されている.推奨1C).Ⅵ 今後最も長期生存を得られるEGFR -TKIの治療順序を考えるにあたって今後発表されるAURA3やFLAURAの全生存期間データは非常に重要な情報となってくる.長期生存はすなわち長期にわたる薬物治療期間を意味するため副作用の管理も重要である.本稿では割愛したが,毒性も熟知したうえでの治療選択が望まれる.【注釈】注1:米国の薬事未承認検査法(laboratory developed test:LDT)に相当する検査.注2:「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺