カレントテラピー 36-9 サンプル page 8/28
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カレントテラピー 36-9 サンプル
Current Therapy 2018 Vol.36 No.9 11分子標的薬剤とコンパニオン診断薬,バイオマーカー843た.主要評価項目のひとつである無増悪生存期間はアファチニブ群で有意な延長が示され,両群の値はそれぞれ11カ月 vs. 10.9カ月,ハザード比0.57であった10).Common mutationを対象としたダコミチニブとゲフィチニブの比較第Ⅲ相試験(ARCHER1050)はダコミチニブが有意に無増悪生存期間を延長(14.7カ月 vs. 9.2カ月,ハザード比0.59,p<0.0001),奏効率はゲフィチニブ群と差はないが奏効期間の有意な延長を認めた(ハザード比0.55,p<0.0001)11).現在本邦で使用可能なのは,このうちゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブであるが注2),メタアナリシスの結果からはこれらの薬剤の効果は同等で,副作用のプロファイルが異なることが示されている12).『肺癌診療ガイドライン』でも現時点では一次治療セッティングにおいて第一・二世代EGFR -TKIの特定の薬剤の推奨はなく,効果と毒性を考慮して薬剤選択するよう推奨されている.3 EGFR-TKIに対する獲得耐性EGFR -TKIによる初回治療の無増悪生存期間は1年程度であり,全症例でいずれは耐性を獲得する.第一・二世代EGFR -TKIの耐性メカニズムは複数存在するが(図3),最も頻度の高いものはエクソン20の790番目のスレオニンがメチオニンに変わるT790M 二次的変異である.同変異による獲得耐性はEGFR -TKI獲得耐性患者の約60%を占める13).T790M 置換はゲートキーパー遺伝子変異であり,この変異によりEGFR -TKI結合部位の構造的な変化,またキナーゼとATPの結合親和性の増加が生じ,第一世代EGFR -TKIが競合阻害できなくなる.次項で述べる第三世代EGFR -TKIはこのT790M 変異耐性を克服するため開発された薬剤である.MET遺伝子増幅に代表されるようなバイパス経路活性化によるEGFR -TKI獲得耐性や,その他の耐性メカニズムに対する治療戦略は臨床試験でその効果が示されたものがない.組織学的転換(transformation)は耐性獲得患者の5%程度にみられるが13),14,非小細胞肺癌から小細胞肺癌への形質転換はRB 遺伝子の喪失が関与し,従来の小細胞肺癌治療が奏効する.Ⅳ 第三世代EGFR-TKI第三世代EGFR-TKIはピリミジン骨格を有し,構造上第一・第二世代EGFR -TKIと異なる.EGFR -TKI感受性遺伝子変異であるエクソン19欠失変異・L858R点突然変異のみならず耐性メカニズムで最も頻度の多いT790M 遺伝子変異EGFRキナーゼも阻害する特徴をもつ.一方で野生型EGFRキナーゼに対する阻害効果が最小に抑えられており,野生型EGFRを阻害することで起こる副作用(皮疹,下痢)が軽減するよう工夫がなされている.複数の第三世代EGFR -TKIが開発されているが,本稿ではそのなかでも本邦ですでに保険承認されているオシメルチニブについて述べる.1 オシメルチニブとプラチナ併用療法の比較AURA3は一次EGFR -TKI治療後に病勢増悪を認めたEGFRT790M 陽性非小細胞肺癌患者を対象とした第Ⅲ相RCTで,標準治療群プラチナ+ペメトレキセド併用化学療法に対するオシメルチニブ治療の効果が検証された.主要評価項目である無増悪生存期間はプラチナ+ペメトレキセド併用療法と比べて有意な延長を示し(10.4カ月 vs. 4.4カ月,ハザード比0.30,95%信頼区間0.23-0.41,p<0.001),高い奏効率も確認された(71% vs. 31%,オッズ比5.39,95%信頼区間3.47-8.48,p<0.001)15).AURA試験T790M遺伝子変異(60%)MET遺伝子増幅(5 ~ 20%)HER2遺伝子増幅(10%)SCLC転化(5%)その他PIK3CA,BRAFなど不明図3 EGFR-TKI獲得耐性のメカニズムとその頻度の概略