カレントテラピー 36-8 サンプル

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10 Current Therapy 2018 Vol.36 No.8738は,まだ欧米諸国に比べると低いものの,今後の海外から就労等の目的で入国する外国出生者の状況によっては,さらに問題が深刻になる可能性が高いため,現在,結核の入国前検診を含め,幅広い対策が検討されている4).母国で感染を受け,母国より切り詰めた生活をして栄養状態も悪く,劣悪な環境にいる者は,健康診断の強化など,入国後も注意が必要である5).発病治療時には,文化,言語の障壁により,患者教育が不徹底になり,社会経済的支援が得られにくいため,治療完遂率が低くなり,薬剤耐性を生じるなど悪循環に陥りやすい.またHIV合併結核は,現在,国内ではかなりまれであるが,十分に留意すべきである.外国人の流入は都市部の問題と考えられやすいが,外国人技能実習生は各産業分野に散らばっているために,結核の発病も各地域,事業所ごとの問題となる.特にわが国に近接した東南アジア地域では,多剤耐性結核が全結核の4~5%を占めるなど,わが国に比べて結核菌の薬剤耐性率が高く,治療前に薬剤感受性検査(特にイソニアジド,リファンピシン)を実施し,菌株を保存しておくことが大切である.特にリファンピシンの薬剤耐性変異は,結核菌rpoB 遺伝子中の81塩基対の領域に集中しており,喀痰からこの遺伝子変異を直接検出することも可能になっている(他稿参照).薬剤耐性結核は,従来,薬剤感受性結核に比べて伝播しにくいとされていたが,最近,結核菌系統によって,あるいは薬剤耐性変異の生じ方やそれを補完する遺伝子変異の出現によってかなりの伝播力がみられ,周囲へ広がりやすいという研究成果が数多く得られており,今後十分な注意が必要である6).Ⅳ わが国における適正医療の提供わが国においては,小児結核は少なく,多剤耐性率は低く,治療脱落率も低く,かつての高蔓延状態から急速に脱してきた道のりは高く評価されるべきである.特に当時の結核予防法,さらに現在の感染症法のもとで,国内の結核対策は公費負担制度と感染症診査協議会による適正医療の提供を受け,実地医家による適切な診断と治療に加えて,保健所が公衆衛生上の対策に中心的な役割を果たし,日本版DOTS(直接服薬確認療法)による服薬支援が定着してきた.活動性結核の治療法は,国際基準に準じて,わが国でも厚生労働省告示として,結核医療の基準が通知されている7).わが国では,標準6カ月治療をベースに(他稿を参照),薬剤感受性検査の結果による① 大阪:22.0② 東京:17.2③ 愛知:16.9④ 岐阜:16.3⑤ 徳島:16.0① 山形:7.2② 長野:7.9 ③ 宮城:7.9罹患率10未満10~13.913.9以上④ 秋田:8.5⑤ 福島:8.6図3 都道府県別罹患率(2016)〔参考文献1)より引用〕7004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(%)2000 01 02 03605040302010 7.6%25.4%43.2%57.7%15~19歳20~29歳30~39歳総数0図4 外国生まれ結核患者割合の推移(2000~2016年)〔参考文献1)より引用〕