カレントテラピー 36-8 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.8 81治療薬解説809治療委員会では当面は以下の原則によって使用の適否を判断するとしている.1) 既存の抗結核薬に薬剤耐性および副作用の点から4~5剤目として使用できる薬剤がない場合は,DLMは使用されるべきである.2) 既存薬で5剤が使用可能である場合,DLMを使用すべきかどうかについてはまだ結論が出ておらず,使用を否定するものではない.3) 既存薬で使用できるものが1~2剤の場合,2~3剤目としてDLMを使用することについては,使用を否定するものではないが,耐性化の危険を考慮し慎重な扱いを要する.4) 結核医療の基準に記載されず,結核薬としての有効性について日本結核病学会治療委員会で推奨していない薬の併用については使用可能であるが,上記の既存薬としては基本的には数えない.ただし,過去日本で承認されたことのある薬であるプロチオナミド(エチオナミドもしくはプロチオナミド感受性例),カプレオマイシン(カプレオマイシン感受性例),およびサイアジド(Tb1,過去同薬未使用例),および日本で承認されたことのない薬であるがLZD未使用例でのLZDの使用は,上記既存薬と同様有効薬と考えてよいものと考える.クロファズミン,AMPC/CVA,メロペネム等については,使用根拠に乏しく日本結核病学会は推奨していない.・DLM使用に際しての施設要件1) 使用する施設に関して精度が高い薬剤感受性検査が実施または利用できる.2) 確実な患者支援(direct observed treatment,short course:DOTS)を行っている.3)院内感染対策ができている.4) 多剤耐性結核治療に十分な治療経験をもつ医師がかかわる.・DLMの用法,用量添付文書に記載される用法・用量は「1回100mgを1日2回,朝夕食後に経口投与」である.また臨床試験においては6カ月を超えて使用していない. Skripconokaらの検討11)では,表3に示すように,DLMを2カ月以内で終了した症例と6カ月以上使用した症例を比較して検討したところ,2カ月以下の群の治療失敗率が11.4%に対して6カ月以上使用した群において16.7%と高かったものの,治癒率は2カ月以内の群で48.5%であったのに対して6カ月以上使用した群において57.3%と高かったとしている.本剤を長期に使用する場合は,リスクとベネフィットを考慮して投与の継続を慎重に判断する必要がある.・DLM使用継続の条件DLMを使用開始してから3カ月を経過しても菌陰性化が得られない場合には耐性化のリスクが高いので,投与を継続することが適当であるか改めて専門家の判断が必要となる.3 LZDLZDは,オキサゾリジノン系完全合成抗菌薬であり,リボソームの50S,30S -mRNA,fMet -tRNAの三者が形成される過程を阻害し,かつ伸長過程を阻害しない新しい系統の抗菌薬である.バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin -resistant enterococci :VRE)感染症やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin -resistant staphylococcus aureus :MRSA)感染症の治療薬として使用されている.細菌リボソーム 50Sサブユニットと特異的に結合し翻訳過程の70S開始複合体の形成を妨げ,細菌のタンパク合成の初期段階を阻害して抗菌活性を示す.In vitroで結核菌に対して優れた抗菌活性を示すことが報告され12),抗結核薬としての効果も証明されている13).ミトコンドリアタンパク質の合成阻害に由来する副作用(貧血,末梢神経障害,血小板減少症など)を起こしやすい.Leeらの超多剤耐性結核を対象とした検討によると14),既存の治療を6カ月行って菌の陰性化の得られなかった39症例に対して,LZDを加えた治療を行い87%にあたる34例に菌の陰性化が得られた6カ月以上2カ月以下治癒57.3% 48.3%完了17.2% 6.6%失敗16.7% 11.4%中断・転出7.8% 25.3%死亡1.0% 8.3%表3 デラマニド2カ月以下投与例と6カ月以上投与例の比較〔参考文献11)より引用〕