カレントテラピー 36-8 サンプル page 26/36
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カレントテラピー 36-8 サンプル
78 Current Therapy 2018 Vol.36 No.8806Ⅰ はじめに結核治療の原則は化学療法が中心であり,大半の結核は化学療法で治癒させることができる.結核の治療歴がない場合,主要な抗結核薬に感受性で,かつ確実に服用できれば,多くの症例において治癒が可能となった.しかし実際には治療中断,不規則な服薬,薬剤の副作用等にて治療失敗例が後を絶たず,薬剤耐性化の原因となる.多剤耐性結核症は医療従事者,患者によるman -made diseaseであり,診断された場合全力を挙げて治癒に至らしめ,他者への感染を防ぎ,新たな多剤耐性結核症患者をつくらないことが重要である.有効な感受性薬剤数が少ない場合には外科的治療の適応も考慮されるが,今回,新規抗結核薬の使用が可能となり,その使用にあたってはあらたな薬剤耐性をつくらないように十分に検討しなければならない.日本結核病学会治療委員会による『「結核医療の基準」の改定―2017』によると,リファンピシン(RFP)あるいはイソニアジド(INH)の両薬剤が耐性あるいは副作用のために使用できない場合は,表1の優先順位に従って感受性がある薬剤を順次選択し,変更する.今回多剤耐性結核の治療にあたり重要となる以下の薬剤について詳述する.Ⅱ 多剤耐性結核の治療に使用される主な抗結核薬1 レボフロキサシン(LVFX)LVFXは,細菌性肺炎および非定型肺炎のいずれにも広く推奨されているニューキノロン系抗菌薬である1).結核についてもWHOの結核治療ガイドライン2)をはじめ,米国胸部疾患学会3),その他,世界の結核診療ガイドラインにおいて,薬剤耐性または副作用のために標準治療ができない場合の必須の薬剤新規結核治療薬の使い方と注意点奥村昌夫** 公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器センター医長日本の結核の最近の動向─ 2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応抗結核薬は,1970年代にリファンピシン(RFP)が登場して以降長く承認されない状況が続いていたが,RFPと同じ系統の薬剤でリファブチン(RBT)が薬剤相互作用あるいは副作用のために使いにくい場合の代替薬として2008年に承認された.その後ニューキノロン系薬剤であるレボフロキサシン(LVFX)が2015年に抗結核薬として承認された.また新たに新規抗結核薬デラマニド(DLM)が,多剤耐性肺結核症(multi-drug resistant tuberculosis:MDR-TB)の治療薬として2014年承認された.そして今回ベダキリンが米国で2012年12月に承認され,日本でも2018年4月に使用が可能となった.有効な感受性薬剤数が少ない場合,外科的治療の適応も考慮されるが,新規抗結核薬の使用にあたっては,あらたな薬剤耐性をつくらないように十分に検討しなければならない.a b s t r a c t