カレントテラピー 36-7 サンプル page 7/32
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カレントテラピー 36-7 サンプル
10 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7616よGERDが増加することが示唆される.今後,H.pylori 感染陰性時代を迎え,高脂肪食や過食などの食生活習慣,睡眠障害特に睡眠不足による食道知覚過敏を介したGERD症状の増悪9),肥満特に内臓脂肪型肥満,非ステロイド系抗炎症薬やアスピリンなど直接食道粘膜を傷害する薬剤やカルシウム拮抗薬や亜硝酸塩など下部食道括約筋圧を下げる薬剤処方の増加などさまざまな因子がGERDに関連する8).Ⅲ びらん性GERD・NERDの病態胃内容物のなかでも,特に胃酸の逆流による食道内の過剰な酸暴露がGERD,特にびらん性GERDの病態である.食道pHモニタリングを用いた検討では,食道粘膜傷害が強いほど(重症びらん性GERDほど),食道酸暴露時間が延長している1).このような胃酸の食道への逆流のメカニズムについては,健常者やびらん性GERD患者ともに,日中,夜間を問わず,嚥下に伴わない下部食道括約筋の弛緩現象である一過性下部食道括約筋弛緩(transient lower esophagealsphincter relaxation:TLESR)が主たる病態である1).食道裂孔ヘルニアや食道クリアランスの障害は胃酸が食道に停滞する原因となる.その他,胃排出能遅延,十二指腸胃逆流による胆汁や十二指腸液の逆流,食道上皮防御機構の低下なども挙げられる8).一方,NERDの病態はびらん性GERDと異なりより複雑である.NERDは症状に基づく疾患概念でありheterogeneousな病態が含まれる.すなわち,病的な酸逆流以外に正常範囲の逆流にもかかわらず酸(pH4以下)や弱酸(pH4-7)に対する過敏により症状が惹起される症例が臨床的に区別できないことが問題である.機能性消化管疾患の国際基準であるRome Ⅳでは,病的な酸逆流がないが症状と逆流との有意な相関がみられるものを「逆流過敏症(reflux hypersensitivity)」,病的な酸逆流もなく,症状と逆流とも相関が全く認められないものを「機能性胸やけ(functional heartburn)」と定義した10).Savarinoらは胸やけ症状があり内視鏡的に粘膜傷害を認めない150例のNERD患者に対して食道インピーダンスpHモニタリング法にてその病態を評価したところ,63名(42%)が病的な酸逆流を認める“いわゆるtrue NERD”,そのほかの症例は病的な酸逆流を認めない症例で,うち45名(30%)が症状と関連のある逆流過敏症,残り42名(28%)は機能性胸やけと診断できたと報告しており11),概ね本邦でも同様な割合と考えられている.これらの病態は図3のように食道酸暴露と食道知覚過敏の割合により規定されていると考えられているが,一般の日常診療では非びらん性GERDと逆流過敏症や機能性胸やけとの鑑別が困難なことが最も問題であり,PPI抵抗性NERDの重要な課題でもある.Ⅳ ガイドラインに基づく治療GERD診療ガイドライン1)に基づく治療フローチャートを図4に示す.内視鏡施行前に逆流症状からGERDを疑い診断的治療を行う場合も,GERDと確定診断され初期治療を行う場合も,長期維持療法が必要と判断された場合もすべてPPIが第一選択として強く推奨されている.Ⅴ PPI抵抗性GERDの定義と治療ガイドラインではPPI抵抗性GERDの定義として標準量のPPIを8週間内服しても①食道粘膜傷害がAcid exposureEsophagealhypersensitivityErosiveesophagitis NERD RefluxhypersensitivityFunctionalheartburn一般臨床でNERDと判断される疾患群図3 GERDおよび機能性食道疾患の病態における酸暴露と食道知覚過敏の関係〔参考文献10)より引用一部改変〕