カレントテラピー 36-7 サンプル page 5/32
このページは カレントテラピー 36-7 サンプル の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 36-7 サンプル
8 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7614Ⅰ はじめに胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は胃内容物の食道への逆流により胸やけなどの煩わしい逆流症状を呈する疾患群である1).GERDは症状の有無にかかわらず内視鏡検査で食道粘膜にびらん・潰瘍といった粘膜傷害(mucosal break)を認めるびらん性GERD(いわゆる逆流性食道炎)と内視鏡的にびらんを認めず逆流症状のみを呈する非びらん性GERD(non -erosivereflux disease:NERD)に分類される(図1).本邦では,GERDの60%はNERDであり,残り40%のびらん性GERDのうち多くはロサンゼルス分類グレードAやグレードBのような軽症例である2).本邦では1990年代後半よりGERD有病率が増加し,最近10年間では緩やかな増加に留まっている2),3() 図2).本稿では,GERD有病率に影響を与える因子,GERDの病態,日本消化器病学会改訂『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン』に基づく治療,PPI抵抗性GERD,PPI長期内服に伴う課題,カリウム競合型アシッドブロッカー(potassium-competitiveacid blocker:PCAB)の役割について述べる.Ⅱ GERD有病率に影響を与える因子本邦におけるGERD有病率増加の要因は,疾患概念の変化や認知度の普及,食生活の欧米化,高齢化,体重の増加などさまざまな要因が指摘されているが,特に酸分泌能増加とヘリコバクター・ピロリ(H.pylori )感染率の低下が重要である2).1970年代と1990年代における日本人の胃酸分泌能を検討した研究では,高齢者・非高齢者,H. pylori 感染陽性者・陰性者ともに1970年代と比較して1990年代では日本人の胃酸分泌能が亢進していたが4),2010年代に同* 大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学教授上部消化管疾患の現況と今後の展望─病態・診断から治療を探るGERD(胃食道逆流症)藤原靖弘*本邦における胃食道逆流症(GERD)の60%は食道粘膜傷害がなく逆流症状のみを認めるNERDであり,びらん性GERD(いわゆる逆流性食道炎)も軽症例が大多数を占める.1990年代後半よりGERD有病率は増加したが,現在も緩やかに増加しつつある.その要因として,ヘリコバクター・ピロリ感染率低下・除菌療法普及や生活習慣の変化が挙げられている.GERDの病態は一過性下部食道括約筋弛緩に伴う胃酸の食道への逆流であるが,NERDでは酸逆流よりも食道知覚過敏が主病態である逆流過敏症や機能性胸やけが一般臨床で区別できない.『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン』では,診断的治療,初期治療,維持療法ともにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択である.PPI抵抗性GERDやPPI長期内服に伴う合併症が課題である.