カレントテラピー 36-7 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 59上部消化管疾患の病態と治療665術後補助化学療法は,『胃癌取扱い規約第13版』による根治A,B手術を施行されたpStage Ⅱ,ⅢA,ⅢB症例(ただしT1を除く)に対してS -1を1年間服用させた試験において,その優位性が証明されている.したがって,該当症例と,それに準じる症例では1年間のS -1服用が一般的である.韓国における臨床試験では,カペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OHP)の有効性が示されており,S -1に対する忍容性が悪い症例では考慮される.切除不能進行または再発胃癌に対する化学療法では,PS 0~2,主要臓器機能が保たれている,重篤な併存疾患を有さないことが必要条件となる.一次化学療法としてはHER2(-)の場合とHER2(+)の場合に分けられる.HER2とはEGFRに似た構造をもつ受容体型チロシンキナーゼで,EGFR2ともよばれているレセプターである.これに対する阻害剤としてのトラスツズマブ(T -mab)(ハーセプチンR)という抗体薬が存在する.HER2(-)の場合には,S -1+シスプラチン(CDDP)とCape+CDDPが最も推奨される一次化学療法となる.これ以外にも,S -1+OHP,Cape+OHP,FOLFOXが弱く推奨される.HER2(+)の場合にはCape+CDDP+T - mabが最も推奨され,S - 1+CDDP+T - mabが弱く推奨される.しかし,実際には,CapeよりもS-1のほうが早期に胃癌に対する保険適応となったため,S -1+CDDP+T -mabを施行している施設のほうが多いかもしれない.T -mab使用中は3カ月に1度心エコーを施行し,心機能低下がないかを確認する必要がある.病変の進行,増大が確認されるまでは一次治療を継続するが,プラチナ製剤には重金属の蓄積作用による神経障害があるので,総投与量に注意が必要である.一次治療による進行,再発が確認され,患者の全身状態が保たれていれば,二次化学療法に移行する.二次化学療法はweekly Pacritaxel(wPTX)+ラムシルマブが推奨されている.HER2(+)症例に対し,一次化学療法が無効になった際,二次化学療法でT -mabを使用する有効性は確認されず,二次化学療法に移行したら,T-mabも中止する.ただし,一次化学療法の際にT-mabを使用しなかったHER2(+)胃癌に対しては,二次化学療法においてT-mabを使用してよいと思われる.三次化学療法としては,ニボルマブが推奨度A,イリノテカンが推奨度Bにて推奨されている.その他,一次化学療法から三次化学療法まで,条件付きで推奨されているレジメンもある.詳しくは胃癌治療ガイドライン4)を参照されたい.Ⅶ おわりに胃癌の診断,治療に関し,概略を記載した.日本は伝統的に胃癌の多い国であったため,胃癌の症例の蓄積,治療法のロジックの形成は卓越している.そのため,日本胃癌学会をベースとした胃癌治療ガイドラインが発行され,数年ごとに改訂されている.詳しく知りたい方は,これを参照されたい.胃癌に対する薬剤の開発は日進月歩であり,その奏効具合により,手術適応,治療法は日々,変化している.おそらく,術式は今後も縮小方向となっていくことが想定される.胃癌で命を落とす患者さんが一人でも少なくなることが望まれる.参考文献1)Graham DY, Yamaoka Y:H. pylori and cagA:relationshipswith gastric cancer, duodenal ulcer, and reflux esophagitisand its complications. Helicobacter 3:145-151, 19982)Cancer Genome Atlas Research Network:Comprehensivemolecular characterization of gastric adenocarcinoma. Nature513:202-209, 20143)Guilford P, Hopkins J, Harraway J, et al:E-cadherin germlinemutations in familial gastric cancer. Nature 392:402-405, 19984)日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂第5版.金原出版,東京,2018