カレントテラピー 36-7 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 57上部消化管疾患の病態と治療663は,医師でなくても技師が撮影できるというメリットはあるが,早期胃癌発見の感度は内視鏡には劣ると思われ,また,胃底腺ポリープのような病的意義の低いものまで,二次検診に廻ってくるというデメリットがあるため,最近は,内視鏡による検診を行う自治体も増えてきている.いずれにしても,日常臨床において,内視鏡による検診を1年以内に受診していない患者さんが消化器症状を訴えて来院した時には,上部消化管内視鏡検査をお勧めすることは必須である.上部消化管内視鏡の際に,胃癌の診断をつけるためには生検が必須である.肉眼的には潰瘍と区別のつかない胃癌,びらんと区別のつかない胃癌も多く存在する.逆に,肉眼的にはかなりの進行癌と思っても,悪性リンパ腫などであった経験もある.今回は胃癌に関する記載のため,詳細なことは割愛するが,H. pylori 感染の有無が不明の場合にはこの検査も行うことが胃癌予防,感染拡大の予防のためには勧められる.H. pylori 感染の有無は内視鏡による肉眼的観察においてもおおよその見当はつくが,確定診断には,生検による培養,迅速ウレアーゼ試験,呼気テスト,便中抗原,血清抗H. pylori IgGなどが必要である.陽性の場合には,除菌が勧められる.上部消化管内視鏡にて,胃癌の診断がつけば,次には,その胃癌の進展程度を診断する.胃癌の転移診断に最も有用なのは造影CTである.もちろん,造影CTにて検出できるサイズ以下の転移も存在し得るので,100%の感度ではない.Ⅴ 手術治療胃癌の中心となる治療法は病巣の除去である.内視鏡による胃粘膜下層剥離術により,病巣の除去がほぼ可能な範囲の胃癌の進展の場合には,内視鏡による胃粘膜下層剥離術を行う.また,その範囲を超えていた場合でも,手術により胃癌の除去が可能と思われる場合には手術を行う4).具体的には,まず,胃癌の診断がついたのち,M0かM1か(遠隔転移陰性か陽性か)を分類する.肝臓をはじめ,他臓器への転移はM1である.腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)もM1である.リンパ節転移に関しては,胃癌の領域リンパ節とされる範囲を超えたリンパ節転移はM1である.M0と分類されたうち,cT1a(M),N0,つまり,粘膜内にとどまる癌で,リンパ節転移がない癌のうちの一部が内視鏡治療の適応となる.これは,臨床的検査ではリンパ節転移がないと診断されても,病理学的にはリンパ節転移が存在することがあるため,ほぼ100%に近く,リンパ節転移がないと思われるような病変だけが,内視鏡治療の適応となるからである.絶対適応病変としては,肉眼的に粘膜内癌(cT1a),かつ,分化型癌,かつ,UL0(潰瘍を伴わない).それから,3cm以下の肉眼的に粘膜内癌(cT1a),かつ,分化型癌,かつ,UL1(潰瘍を伴う),の2通りである.適応拡大病変としては,2cm以下の肉眼的粘膜内癌(cT1a),かつ,未分化型癌,かつ,UL0である.この条件を満たす病変が内視鏡治療で長期予後に問題がないかどうかは,臨床試験の結果バリウム検診有症状内視鏡検査内視鏡二次検診内視鏡検診胃癌が疑われる病変あり胃癌が疑われる病変なし生検検診胃癌悪性所見なし治療図2胃癌診断のフローチャート検診,有症状から上部消化管内視鏡検査に入り,最終的に悪性所見がなければ,検診にまた入る.