カレントテラピー 36-7 サンプル page 12/32
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カレントテラピー 36-7 サンプル
56 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7662ラスタリングした報告がなされた.この分類によると胃癌はEBウイルス感染型,マイクロサテライト不安定型,遺伝子安定型,染色体不安定型に4分類される(図1)2).この4つの分類のなかでは,「その他」にあたるのが「染色体不安定型」になるようだが,実は,H.pylori 感染により惹起される胃癌はここに属するものが一番多く,結局,このH. pylori 感染による胃癌のなかではあまり綺麗な分類はなされていないことになる.やはり,H. pylori 感染という,いわば炎症を元に発生した癌であるから,その遺伝子変異も多様であり,また,癌になってからも多大に変異することが想定され,そのために分類も困難ということであろう.H. pylori 感染以外での胃癌の病因としては,CDH1(E -Cadherinをコードする遺伝子)変異を有する家族性胃癌が知られているが,日本での報告はまだそれほど多くはない.しかし今後,増加する可能性はある3).Ⅲ 病態病態は胃粘膜から癌が発生し,それが時間とともに,水平方向に大きくなると同時に,胃壁深く進展する.分化型胃癌では粘膜下層以下に達すると,未分化型胃癌では粘膜内であっても大きさが2cmを超えると,リンパ管,血管内にも癌が侵入し,リンパ節転移,血行性転移を起こすようになる2).リンパ節転移,血行性転移の頻度は,胃癌の壁深達度が深くなればなるほど高くなる.また,胃壁の筋層以深では,腹腔内に胃癌細胞が散らばって,散布移植される腹膜播種が生じる可能性がある.胃癌の症状は癌の進行度により大きく変化することはいうまでもない.内視鏡治療の適応となるような早期の病変では,症状が出ることはまれである.背景となる慢性萎縮性胃炎に起因する,ディスペプシア症状,ビタミンB12欠乏などの症状は出現する可能性があるが,癌そのものの症状ではない.しかし,進行するとともに,いろいろな症状が惹起される.胃癌は潰瘍を伴うことが多いため,潰瘍によると思われる,貧血,胃痛が出現することがある.また,特に幽門近くに胃癌ができた場合には,食物の排出障害が出現し,嘔吐,食欲不振,体重減少などが出現し得る.そして,胃癌の特徴のひとつとしては,腹膜播種という進展形式を取りやすいことが挙げられる.腹膜播種も初期においては,それによる症状は出にくいが,進行すれば,腹部膨満,腹水貯留,腸閉塞症状が起こり,後腹膜への進展が見られれば,尿管閉塞による水腎症が惹起される.肝臓,肝門部リンパ節は転移の好発部位であり,黄疸,肝不全が起こることもある.また,骨転移を生じることもある.何れにしても,他の癌種と同様,進行した時の症状は厳しいものである.このため,早期発見が肝要であり,また,適切な治療が望まれる.Ⅳ 診断胃癌の存在診断は,上部消化管内視鏡による観察,生検による(図2).治癒可能な範囲で診断するためには,上記のごとく早期では症状が出にくいことから,検診が望まれる.日本においては,かなり以前より胃透視による検診が行われてきている.これCIN(chrom instability)MSI(hypermutated)EBV(EBV-CIMP)GS(genomically stable)SCNA highclusterEBVpositiveMSI high29526 26964 20558 147図1 TCGAによる胃癌の分類胃癌はEBウイルス感染型,マイクロサテライト不安定型,遺伝子安定型,染色体不安定型に4分類される.〔参考文献2)より引用改変〕