カレントテラピー 36-6 サンプル

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8 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6510Ⅰ はじめに膵管癌(以下,膵癌)は浸潤性発育を示す悪性腫瘍であり,病理学的には線維性間質に富む腺癌である1).比較的大きな腫瘍の場合には単純CTでも腫瘤を疑うことができる.しかし,比較的小さな腫瘍の場合には単純CTでは指摘が困難なことが多い.したがって,ヨード造影剤を用いたダイナミックCTが膵癌の確実な診断には必須となる.近年,CT装置は64列~320列の多列CT(multidetectorrow CT:MDCT)が標準となっており,膵癌の正確な診断のためには最適なプロトコールでダイナミックCTの撮影を行うことが推奨される.膵癌の検出能や進展度診断能を向上させるには,十分量の高濃度ヨード造影剤を急速に静注し,薄いスライス厚で,多相のダイナミックCTを行う必要がある2).Ⅱ 膵のダイナミックCTの撮影方法当院(金沢大学附属病院)における64列のMDCTでの撮影法を示す(表).膵疾患では高濃度造影剤(350mg/I,100~135mL)が推奨される.造影剤の注入時間は30秒に固定している(注入時間一定法)3).使用する造影剤量は1.8mL/kg(60kgなら108mL,70kgなら126mL)とし,造影剤の注入スピードを注入量/30秒(60kgなら3.6mL/s,70kgなら4.2mL/s)としてダイナミックCT検査を行っている.ダイナミックCTの撮影は単純CT後に早期動脈相,後期動脈相,門脈相,平衡相の5相の撮影が推奨される4).当院では5分後の遅延相も追加している(図1⑥).最も腫瘍の検出能が高いのは後期動脈相であり,別名膵実質相とも呼ばれている(図1⑦).高濃度のヨード造影剤を使用する理由は,①膵周囲の脈管を明瞭に描出するため.②乏血性の膵癌を低吸収域として明瞭に描出(陰性に描出)するため* 金沢大学附属病院病院長/放射線科教授膵疾患の診断と治療─ 21世紀の進歩とUp-to-date膵癌の診断蒲田敏文*膵癌のダイナミックCTによる画像診断について解説した.膵癌の検出と正確な進展度診断を行うためには,造影CTの撮像方法に工夫をこらす必要がある.薄いスライス(1.25~2.5mm厚),高濃度高容量ヨード造影剤,適切なタイミングでの撮影(単純,早期動脈相,膵実質相,門脈相,平衡相)が重要である.また,CT画像は横断像に加えて斜位冠状断,斜位矢状断などの多方向の再構成画像(MIP像)による観察が勧められる.膵癌の進展度診断を行う場合には多方向から観察し,漿膜浸潤,後腹膜浸潤,神経叢浸潤,脈管浸潤,遠隔転移の有無を詳細に観察することが重要である.また,CTを用いた膵癌の切除可能分類も理解しておくことが推奨される.