カレントテラピー 36-6 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.6 7509膵疾患の診断と治療― 21世紀の進歩とUp-to-date ―企画自治医科大学消化器・一般外科教授佐田尚宏21世紀に入り膵疾患の診断・治療は長足の進歩をとげた.膵疾患診断の基本はCT,MRI,EUSなどの画像診断である.CTは2000年前後に多検出器CT(MD -CT)が開発され,当初4列であった検出器が現在では320列の機器が臨床使用されている.MRI,EUSなどでも解像度の精緻化が進み,1~2mm単位での診断が日常的に行えるようになった.膵疾患治療も大きく変化した.特に膵癌,急性膵炎の治療はパラダイムシフト的に大きく変容している.2000年以前,膵癌治療は外科的切除が唯一の方法であったが,その成績は消化器癌では最低で,切除例ですら5年生存率は10%に満たなかった.その膵癌治療を一変させたのは,抗癌化学療法の進歩である.2001年塩酸ゲムシタビンが保険収載され,2007年にはCONCO -001試験で術後補助化学療法セッティングでの有効性も示された.2010年以降FORFILINOX,GEM+nabPTXなどの多剤併用療法が登場し,conversion surgeryという用語が用いられるようになった.症例によっては外科的切除がむしろ「補助療法」的に位置づけられることさえある.2017年,切除例の5年生存率は25.1%まで改善された.急性膵炎では,診断,重症度分類,膵局所合併症のgolden standardであったAtlanta分類が2012年に改訂された.被包化壊死(walled -off necrosis:WON)などの新たな用語が使用されるようになり,1980~90年代には広く行われていた早期ドレナージ手術の有効性が否定された.発症早期は内科的集中治療および経腸栄養が基本となり,ドレナージ,ネクロセクトミーなどのインターベンションは適応が感染合併例に限定され,できるだけ後期に行うことが現在では推奨されている.それに加えて,内視鏡的アプローチ,腹腔鏡的アプローチなどの低侵襲インターベンションが登場した.慢性膵炎では,2009年の診断基準改訂で早期慢性膵炎が定義され,アルコール性慢性膵炎に対しては治療よりも発症防止に重点を置いた介入が検討されている.自己免疫性膵炎,膵神経内分泌腫瘍は今世紀に入ってから疾患概念が確立した.IPMN・MCNの国際ガイドラインが策定されたのは2012年である.近年,きわめて多くの新知見が得られた膵疾患全般について,21世紀の進歩という観点で本特集を企画した.明日の診療に役立つ情報となれば幸いである.エディトリアル