カレントテラピー 36-6 サンプル

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86 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6588膵癌のconversion surgery関西医科大学外科学講座准教授 里井壯平関西医科大学外科学講座助教 山本智久関西医科大学外科学講座講師 柳本泰明切除不能膵癌に対する標準治療は,化学(放射線)療法であるが,1997年にゲムシタビンが登場し,延命が期待できるようになった(生存期間中央値;MST,6~8カ月).その後,S -1,ゲムシタビン+ナブパクリタキセル,FOLFIRINOX(MST,8~12カ月)などのレジメンが開発され,生存期間延長のみならず一定の腫瘍縮小率が得られるようになった.最近では腫瘍縮小が得られ,耐術可能な患者では集学的治療の一環としての切除(conversionsurgery)が行われ,高い病理学的根治切除率(およそ80%)ならびにリンパ節転移陰性率(およそ80%)が得られ,切除可能膵癌とほぼ同等の生存期間(初回治療開始後からのMST,25~56カ月)が報告されてきた.切除不能膵癌は,他癌腫と異なり局所進行ならびに遠隔転移の2つの非治癒因子が存在する.conversion surgeryは,局所進行膵癌の17~36%,遠隔転移の5%以下に行われており,そのMSTは局所進行膵癌で25~42カ月,遠隔転移で26~56カ月とほぼ同等であり,遠隔転移患者においてもその治療効果が期待されている.手術適応により治療成績に差があり,いまだ標準化された基準は認められないものの,一般的には,腫瘍縮小,腫瘍マーカー低下,全身状態良好,初回治療後8カ月以降に切除することが基準のひとつとされる.しかしながら,諸家の報告からは,conversionsurgery後20~30%の患者で切除後半年以内に再発することが指摘されており,切除適応に関しては更なる検討を進めていく必要がある.今後,conversion surgeryの恩恵を享受できる患者を選別するために,最適な集学的治療レジメン,治療期間,術後補助治療など臨床的課題を克服すべきと考えられる.現在本邦では,膵癌術前治療研究会(http://www.surg.med.tohoku.ac.jp/society/)でPREP -04試験(初診時切除不能で,非手術療法が一定期間奏効した膵癌に対する切除術の施行可能性,安全性,有効性の前向き観察研究)が進行中であり,前向きにconversionsurgeryを企図した患者100名の登録作業を行っており,その結果が待たれるところである.膵疾患の診断と治療─ 21世紀の進歩とUp-to-date