カレントテラピー 36-6 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.6 81583Ⅰ はじめに消化酵素薬は髙峰譲吉によって開発されたタカヂアスターゼRの発売より,わが国では100年以上にわたって使用され続けている.消化酵素のタカヂアスターゼRは「第一三共胃腸薬(発売時:三共胃腸薬)」の前身であり,ヂアスターゼとはアミラーゼの旧称である.現在も多種の非腸溶性の消化酵素配合薬が使用され,その保険適用は「消化異常症状の改善」である(表1)1).これらの消化酵素配合薬は胃酸により容易に失活するため,膵外分泌不全の補充療法として使用する場合には,承認されている用量以上の常用量の3倍量(~ときには12倍量)が必要である.わが国では187万人に1人の頻度であるが,白人の2,500人に1人の頻度で発症する常染色体劣性遺伝の遺伝性疾患である嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は,慢性閉塞性肺疾患,汗の電解質濃度の異常高値とともに約85%の患者で小児期早期から膵外分泌機能が進行性に障害される.消化酵素薬補充療法を施さないCF患者の予後は不良であり,欧米での膵外分泌不全に対する治療対象疾患である.米国では2013年の段階で5種類の腸溶性製剤(CreonR, PancreazeR, PertzyeR, UltresaR, ZenpepR)が膵外分泌機能不全のCFに対して,米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けている.欧米との疾患背景の違いもあり,わが国には膵外分泌機能不全に対する膵消化酵素補充療法を目的とした高力価の腸溶性製剤は2011年のリパクレオンRの保険収載までは1製剤もなかった.わが国で使用可能な消化酵素薬を表1に示すが,2018年現在においても力価の高い消化酵素薬はリパクレオンRの1製剤のみ消化酵素薬―リパクレオンRを含めて―阪上順一*1・片岡慶正*2・十亀義生*1・保田宏明*1・加藤隆介*3・土井俊文*3・三宅隼人*4・諏訪兼敏*4・提中克幸*4・髙田智規*4・伊藤義人*5*1 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学講師*2 京都府立医科大学消化器内科特任教授*3 京都府立医科大学消化器内科研修員*4 京都府立医科大学消化器内科大学院生*5 京都府立医科大学消化器内科教授膵疾患の診断と治療─ 21世紀の進歩とUp-to-date欧米における消化酵素薬は,複数のパンクレリパーゼ腸溶性製剤(CreonR, PancreazeR,PertzyeR, UltresaR, ZenpepR)が認可されているが,わが国の腸溶性製剤は,リパクレオンR1製剤のみである.慢性膵炎に対する疼痛対策に関しては,非腸溶性製剤と胃酸分泌抑制薬の有効性を示した報告が多く,消化酵素薬の腸溶性製剤が疼痛管理に有効であった報告は少ない.一方,『慢性膵炎診療ガイドライン2015』では「脂肪便と体重減少を伴う慢性膵炎患者には高力価の消化酵素薬による治療を行うことを推奨する」推奨の強さ;1(合意率100%),エビデンスレベルAとなっており,膵外分泌不全症状に対する治療の推奨度は高い.リパクレオンR「1回600mgを1日3回,食直後に経口投与」が通常の用法および用量であるが,るいそうや膵外分泌機能不全症状が軽度の症例では,「1回300mgを1日3回,食直後に経口投与」でも,ほぼ同等の治療効果があるといわれる.a b s t r a c t