カレントテラピー 36-6 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.6 79代替療法581落ち着くと,しばらくこの時期が続くと考え始める家族もいる.筆者が所属する緩和ケア病棟では,医療者と家族に共有できる情報としてPaP scoreをもとに,終末期の家族説明,症状緩和の目標設定,輸液実施の有無や鎮静の適応などを話し合うことが多い.Ⅳ 悪液質と食事のサポートがん進行の病状説明は局所症状と,全身症状の双方の面から整理すると,患者・家族に伝わりやすい.局所症状は疼痛やさまざまな消化器症状,全身症状は全身衰弱と食欲不振がある.Lunneyら11)は,14,456人の65歳以上を対象にした英国のコホート研究で,調査した6年間に亡くなった方で死亡の1年以内にインタビューできていた4,190人の日常生活動作(ADL)を調べた.その結果,突然死,がん,臓器障害,老衰(frailty)でのADLの低下には違いがあり,がんは最後の3カ月でADLが大きく下がっていた(図3).悪液質は進行がんの15~45%でみられ,特に膵癌,胃癌患者に多いことが知られている12).悪液質が進行すると全身衰弱,食欲不振は急速に悪化するため3カ月よりも短い経過をたどる.日本では,淀川キリスト教病院ホスピスでの調査で,全身倦怠感と食欲不振が余命2カ月ぐらいから出現すると報告されていた13()図4).この全身倦怠感には「身の置き場のないだるさ」の場合と「活力がでない.ぼーとする.活動がおっくうになる」の場合がある.がんによる衰弱,特に悪液質は代謝障害であり,食べないから痩せるのではなく,自然に食欲がなくなる.この時期は食べることの意味が,「栄養摂取」から「味わう喜び」に切り替わっていく.市立大津市民病院緩和ケア病棟では,料理研究家辰巳芳子先生に直接指導を受けた「いのちのスープ」を,ボランティアが病棟でつくって週1回患者に提供している.それまで食事ができなかった方が,このスープを飲んだことがきっかけで,再び食べる喜びを取り戻され,経口摂取量を再開されたことを経験している.また緩和ケア病棟では病院食以外に,麺類や,ちらし寿しなど,より日常的な選択メニューを提供している.病院食は食べられないが,選択メニューだと食べられる方,また食べることを楽しみにされている方が多く,食べる喜びを思い出される方が多い.膵癌患者のなかには,高脂肪食を好んで食べていた方がいる.膵外分泌機能が低下すると,脂肪の消化ができずに下痢をすることが多い14)が,本人は,るい痩が進んでいるからこそ高カロリーの高脂肪食や経口栄養剤を食べようと無理をし,かえって下痢をされる.体の変化を説明し,低脂肪食を勧めることで下痢が治まり,安心して食事ができるようになる.Ⅴ 疼痛緩和膵臓は腹腔神経叢に近く,強い痛みが生じやすい.そのためアセトアミノフェンやNSAIDs,弱オピオイドだけでは治療困難なことがあり,オピオイドの導入を,少量の強オピオイドから開始することも多い.また疼痛緩和が不十分であれば,プレガバリン(リリカR)などの神経障害性疼痛に対する薬剤の併用を検討する.上部消化管のがん性疼痛は腹腔神経叢ブロックの良い適応であり,内服薬だけでは疼痛緩和が難しいケースや最後まで自宅で過ごすことを希望されているケースについては,早期に専門家にコンサルトする方法もある15),16).腹腔神経叢ブロックにより,血圧低下を起こすことがあり,多くは一泊の入院で対応されている.神経ブロックをすることで,服用するオピオイドの量を減量でき,さらに終末期せん妄の発生率とその期間が少なくなることが報告されている17).Ⅵ おわりに膵癌は予後が悪く,早期からの緩和ケアの必要性