カレントテラピー 36-6 サンプル

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76 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6578を用い,本人の受け入れられる速度に合わせて伝えていくものである.紙面の都合上詳しく述べることが出来ないが,「がん」であることは正確に伝えるが,説明の最中に何度も「がん」という言葉を繰り返さない,説明の中でこれからも「苦痛を取ること」,「医療者として最善を尽くしていくこと」を申し添えるなどの配慮は記憶しておきたい点である.2010年にTemelら3)は,遠隔転移のある肺癌患者に対して,標準治療群と,標準治療+早期からの緩和ケア群を比較し,後者は患者の生活の質(QOL)が上昇,不安・抑うつの低下,さらに生存期間の中央値が2.7カ月延長したと報告した(図2).その後の事後解析4)で,がん治療医も緩和ケアチームも症状コントロールや病状の相談はしていたが,緩和ケアチームで特徴的であったのは,対処:coping(心理社会的な面を重視した病状理解や今後の対応の検討)であることがわかった.また,介入群は終末期の早い段階で抗がん剤治療を止める割合が高かったこともわかった.進行の早いがんでは,患者・家族にとって,治療や終末期の過ごし方,生活の整理など,決断を要することが連続する.告知の時からの経過を知り,病気や治療のつらさと,そのときどきの選択を見守ってくれる医療関係者の存在は心の支えになる.筆者の緩和ケア外来に紹介されてくる患者に,「ここは患者さんが相談したいことについて話していただく時間にしています」と伝えると,ほとんどの患者は,自分の病気がわかった状況,治療経過,なぜここに来ることになったのかという話をされる.これは,悩みを共有することなく,相談は始まらないという患者の思いであろう.コミュニケーション(communication)はラテン語のcommunicare(共有する)を語源とする.一定の関係ができると緩和ケア外来で対応をする患者からは,「治療をしてもらっているのに,痛いというのは,治療がうまくいっていないと言っているように受け取られないだろうか」,「余命について聞くのは失礼ではないだろうか」,「抗がん剤の治療を止めたいけれど,言うと見捨てられるのではないだろうか」,などの相談を受ける.主治医以外のサポートスタッフがかかわる意義を感じる場面である.ところで膵癌の告知は,患者・家族にとって大きなストレスであるが,精神障害はひとつの大きな問7962.9367.97033.572.297.52765.30 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100膀胱悪性リンパ腫食道膵臓腎・尿路(膀胱除く)肝臓大腸前立腺肺胃男性68.594.992.530.57.576.948.26369.691.10 20 40 60 80 100悪性リンパ腫甲状腺皮膚肝臓膵臓子宮肺胃大腸乳房女性図1 男女別にみた罹患者数順のがん種別5年生存率(%)(2006~2008年診断例)〔国立がん研究センターがん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/index.html)より引用〕表1 膵臓癌の病期別5年相対生存率(対象:2006~2008年に診断を受けた患者)病期症例数(件) 5年相対生存率(%)Ⅰ 234 41.2Ⅱ 789 18.3Ⅲ 751 6.1Ⅳ 1,941 1.4全症例3,820 9.2全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2017年5月集計)による表2 SHARE:患者が望むコミュニケーションの4要素Supportive environment(支持的な環境)How to deliver the bad news(悪い知らせの伝え方)Additional information(付加的な情報:今後の治療方針や本人の気がかりを相談)Reassurance and Emotional support(安心感と情緒的サポート)