カレントテラピー 36-6 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.6 75577Ⅰ はじめに国立がん研究センターがん情報サービスの統計によると,現在,生涯でがんに罹患する割合は男性が3人に2人,女性は2人に1人となり,がんと診断されることはまれなことではなくなった.がんの種類によっては,治療成績が上がり,がんの罹患=死ではなくなりつつあるが,そのなかで,膵癌の部位別5年生存率は,他のがんに比べて際立って低く,膵癌と診断された場合は,告知そのものが緩和ケアのスタートであることを意識する必要がある.ここでは膵癌の緩和ケアのポイントとして,告知の仕方,その後の多職種サポートの重要性,予後予測,全身倦怠感と食欲不振,疼痛緩和について述べる.また,食欲不振に対する市立大津市民病院緩和ケア病棟での「いのちのスープ」や「緩和ケア食」の試みについて紹介する.Ⅱ 告知の重要性とその後のサポート現在,がんの情報はインターネットで容易に入手でき,国立がん研究センターがん情報サービスでは,図1,表1の数字をみることができる.多くのがんの治療が進むなかで,膵癌の告知は患者に死を強く意識させざるを得ず,患者・家族に大きな精神的負担を与える.膵癌の告知にかかわる医師は,特にその伝え方に配慮をする必要がある.日本人が悪い知らせを伝えられる際に医師に望む態度と行動に関する患者の意向の研究がなされ,SHARE(表2)1),2)として整理された.これには医師と患者との効果的なコミュニケーションの要点がまとめられており,がん診療連携拠点病院を中心に開催されている緩和ケア研修会で学ぶことができる.医学情報(正確,わかりやすい,意思決定に必要な情報)を心理的技術(安心できる場の設定,傾聴・共感,保証など)*1 地方独立行政法人市立大津市民病院緩和ケア科診療部長*2 地方独立行政法人市立大津市民病院精神・心療内科診療部長,緩和ケア科医長*3 地方独立行政法人市立大津市民病院理事長膵疾患の診断と治療─ 21世紀の進歩とUp-to-date膵癌の緩和ケア津田 真*1・畑 譲*2・片岡慶正*3膵癌は予後が悪く,早期からの緩和ケアの必要性が高い疾患である.膵癌の最初の緩和ケアは,病気を上手に伝えることであり,その際は,「SHARE」(=日本人が悪い知らせを伝えられる際の望ましいコミュニケーションの要素)を活用することが有効である.膵癌の緩和ケアには,予後を考えながらの対応,急速に進む全身衰弱と食欲不振への説明,そして疼痛緩和が特に求められる.医療者は患者・家族視線のサポートができるように,患者・家族が理解しやすい言葉を使えること,さまざまな問題に対応してくれる窓口を知っていること,チームとして対応していく姿勢をもっていることが必要である.主治医以外のサポートスタッフとの連携により,患者・家族の病状理解や,精神的社会的困難に対処する援助がより可能となる.