カレントテラピー 36-6 サンプル

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46 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6548場合をIAH,IAPが20mmHg以上かつ新たな臓器障害/臓器不全が発生した場合をACSと定義されている5).重症急性膵炎でのIAH/ACS発症率は,IAHが60~80%,ACSが4~6%と報告されている.膵炎発症1週間以内が多く,ACSを発症した場合の致死率は47.5%と高率であることが報告されている.重症急性膵炎の診療において経時的なIAPの測定が推奨される.治療に関しては,IAP 12mmHg以上で内科的治療を開始し,IAP測定を4~6時間ごとに行って,IAP 15mmHg以下の管理を管理目標とすることが推奨されている.治療の手順として,消化管減圧,腹腔内減圧,腹壁コンプライアンスの改善,輸液療法の適正化,全身と局所の適切な循環管理について,それぞれ段階を追って行うように提案されている.消化管減圧は経鼻胃管や経肛門管の挿入による胃・大腸の減圧,消化管蠕動薬の投与,経腸栄養の減量や浣腸を行う.腹腔内減圧目的に,腹水などの貯留液に対して経皮ドレナージを検討する.腹壁コンプライアンスの軽減には,適切な鎮静鎮痛が重要である.改善がなければ,筋弛緩薬の投与も検討する.適正輸液として,過剰輸液を避けて,発症3日間でゼロまたはマイナスの累積水分バランスを目標とし,循環動態が安定したら利尿剤の投与を考慮する.Ⅳ 急性膵炎の合併症に対する内科的治療1 胆石性膵炎に対する治療胆石性膵炎と診断され,胆管炎合併例,黄疸などの胆道通過障害が遷延する症例は,ただちに緊急でERCPを行い,内視鏡的乳頭切開術(endoscopicsphincterotomy:EST)を施行し,総胆管内の結石を除去することが推奨されている.特に重症急性膵炎例ではその有用性が高い.抗血栓薬内服や凝固異常などで出血リスクが高い場合は,ESTを行わずに胆管ドレナージのみを行い,状態が安定してから待機的に結石治療を行う.2 膵局所合併症に対するインターベンション治療2012年に急性膵炎の重症度や膵局所合併症に関する国際分類であるアトランタ分類が大幅に改訂され,壊死性急性膵炎に伴う滲出液や壊死物質の貯留は,発症4週未満の初期のものはacute necrotic collection(ANC),壊死物質の液状化が進み被包化され発症後4週以上経過したものはwalled -off necrosis(WON)と提唱された6()表4).壊死性膵炎に対する早期手術は死亡率が高く,非感染性膵壊死( 感染を伴わないANCあるいはWON)は保存的に軽快することも多い.ガイドライン2015では,壊死性膵炎ではまず保存的治療が原則であるが,感染が疑われるか,全身状態の悪化を伴う感染性膵壊死がインターベンション治療の適応である,とされている.また,非感染であっても消化管狭窄,膵管胆管狭窄,腸閉塞等の有症状例は治療適応となる.感染性膵壊死の確定診断に関して,以前は穿刺吸引(fine needle aspiration:FNA)による細菌学的検査が有用と考えられていた.しかし,その後の検討によりFNAは偽陰性率が20~25%と高く,臨床所見とCT所見でほぼ診断することが可能であり,FNAの結果が治療変更に結びつくことが少なくなっている.このことからガイドライン2015では,感染性膵壊死の診断にはルーチンのFNAは不要であり,臨床徴候やCTで総合的に判断し,全身状態の悪化があれば診断と治療を兼ねて経皮的ドレナージあるいは内視鏡的ドレナージを行うことが推奨されている.インターベンション治療の時期については,できるだけ発症4週以降まで待機し,壊死巣が十分に被包化されたWONの時期にインターベンション治療を行うことが推奨されている7).しかし,ドレナージの時期を逸さないことも重要であり,患者の状態によっては早期に実施することもあり得る.インターベンション治療に関しては近年,低侵襲な後腹膜アプローチ,経皮的ネクロセクトミーや内視鏡的ネクロセクトミーの方法が開発され,従来の開腹手術と比較して良好な成績が報告されている.さらに,感染性膵壊死の35~56%が経皮的ドレナージもしくは内視鏡的ドレナージのみで治癒することができると報告されている.低侵襲的アプローチから段階的に侵襲度を上げて治療を行う方法である