カレントテラピー 36-6 サンプル

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44 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6546臓器障害をきたすため,発症早期から十分量の輸液を行うことが最重要である.細胞外液を用いて,尿量0.5mL/kg/時を目標に急速輸液を行う.急速輸液を終了する目安としては,平均動脈圧{=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3}を65mmHg以上に保ち,かつ尿量0.5mL/kg/時の確保であり,この指標を満たせば段階的に輸液速度を低下させる.漫然と急速輸液を継続するとかえって死亡率や人工呼吸期間が増大するため,輸液量の厳密な調整が必要である.疼痛ストレスは病態を悪化させるため,十分な疼痛管理も重要である.無作為化比較試験(RCT)の結果から,ブプレノルフィンの持続静脈内投与はOddi括約筋収縮作用による病態の悪化も認めず,除痛効果に優れていたと報告されており,急性膵炎の疼痛管理に有用である2).3 薬物療法1)予防的抗菌薬投与予防的抗菌薬は,腸内細菌群の膵および膵周囲の感染合併を予防し,生命予後を改善させることが目的である.膵への移行性がよく,抗菌スペクトラムの広いカルバペネム薬が選択されることが多い.抗菌薬投与開始のタイミングに関するメタ解析の結果により,発症後72時間以内の重症膵炎もしくは壊死性膵炎では,死亡率と感染性膵合併率の有意な改善効果が認められている3).ガイドライン2015では,軽症例に対して予防的抗菌薬は必要ないとされ,重症例や壊死性膵炎に対して発症後72時間以内の投与により生命予後を改善する可能性がある,と記載されている.しかし,投与期間に関しては明確な見解が得られていない.長期投与は耐性菌や真菌感染の1 Base Excess≦-3mEq/L,またはショック(収縮期血圧≦80mmHg)2 PaO2≦60mmHg(room air),または呼吸不全(人工呼吸管理が必要)3 BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL),または乏尿(輸液後も1日尿量が400mL以下)4 LDH≧基準値上限の2倍5 血小板数≦10万/mm36 総 Ca≦7.5mg/dL7 CRP≧15mg/dL8 SIRS 診断基準※における陽性項目数≧39 年齢≧70歳※ SIRS 診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90回/分,(3)呼吸数>20回/分または PaCO2<32torr,(4)白血球数>12,000/mm3か<4,000mm3または10%幼若球出現腎下極以遠結腸間膜根部前腎傍腔3点以上2点1点以下2点1点0点Grade 3Grade 2Grade 1A.予後因子(予後因子は各1点とする)1 炎症の膵外進展度(図Ⅳ-2 参照) 1+2 合計スコアB.造影 CT Grade①予後因子が3点以上,または②造影 CT Grade 2 以上の場合は重症とする.重症の判定2つの区域全体を占める,またはそれ以上の場合2つの区域にかかる場合各区域に限局している場合,または膵の周辺のみの場合2点1点0点2 膵の造影不良域(図Ⅳ-3 参照) 膵を便宜的に3つの区域(膵頭部,膵体部,膵尾部)に分け判定する.表3急性膵炎の重症度判定基準〔参考文献1)より引用〕