カレントテラピー 36-6 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.6 43545疾患となる胃十二指腸潰瘍穿孔,虫垂炎,上腸間膜動脈閉塞などの急性腹症や唾液性疾患を合併している場合は,血中アミラーゼが高値となる場合があり注意を要する.脂質異常症に伴う急性膵炎では血中アミラーゼが高くならないことがある.また,胆石性膵炎の場合には治療方針が異なるため,血液検査で肝胆道系酵素の上昇,画像所見上で胆石の存在を見落とさないことが重要である.2 重症度判定本邦における急性膵炎診療は,予後因子スコアと造影CTの所見の独立した2系統による厚生労働省重症度判定基準(表3)を用いて発症から48時間以内に軽症か重症かを判定し,治療方針を決定する.初期には軽症でも急激に重症化することがあるため,繰り返し重症度を判定する.予後因子スコア3点以上,あるいは造影CTのGrade2以上が重症と判定される.重症急性膵炎の頻度は約15%である.Ⅲ 急性膵炎の内科的治療1 基本的治療方針急性膵炎と診断した場合,入院加療として十分な輸液,疼痛管理,バイタルサインのモニタリング(血圧,脈拍,呼吸数,SpO2,体温,尿量)を行う.重症の場合には,厳密なモニタリングと迅速な対応が必要なため,ICUへの転棟や重症膵炎に対応可能な施設への転院を検討する.重症例では,動脈血ガス・酸塩基平衡分析,中心静脈圧,電解質バランスなどのモニタリングも行い,必要に応じて気管挿管・人工呼吸管理,カテコールアミン投与などの呼吸循環管理を行う.軽症例であれば末梢輸液,一般病床で管理できるが,発症3日頃までは重症に移行する可能性があるためモニタリング,経時的な重症度判定が必要である.2 輸液と疼痛対策高度の血管内脱水が惹起され,末梢循環不全から急性膵炎では,特殊な状況以外では原則的に以下のすべての項が実施されることが望ましく,実施の有無を診療録に記載する.1. 急性膵炎診断時,診断から24時間以内,および,24-48時間の各々の時間帯で,厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する.2.重症急性膵炎では,診断後3時間以内に,適切な施設への転送を検討する.3. 急性膵炎では,診断後3時間以内に,病歴,血液検査,画像検査などにより,膵炎の成因を鑑別する.4. 胆石性膵炎のうち,胆管炎合併例,黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例には,早期のERCP+ES*の施行を検討する.5. 重症急性膵炎の治療を行う施設では,造影可能な重症急性膵炎症例では,初療後3時間以内に,造影CTを行い,膵造影不良域や病変の拡がりなどを検討し,CT Gradeによる重症度判定を行う.6. 急性膵炎では,発症後48時間以内は,十分な輸液とモニタリングを行い,平均血圧**65mmHg以上,尿量0.5mL/kg/時以上を維持する.7.急性膵炎では,疼痛のコントロールを行う.8. 重症急性膵炎では,発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬の予防的投与の可否を検討する.9.腸蠕動がなくても診断後48時間以内に経腸栄養(経空腸が望ましい)を少量から開始する.10.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には,膵炎沈静化後,胆嚢摘出術を行う.表1Pancreatitis Bundles 2015*ERCP+ES:endoscopic retrogradecholangiography with endoscopicsphincterotomy**平均血圧:拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3〔参考文献1)より引用〕表2 急性膵炎の診断基準1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある.2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある.3. 超音波,CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある.上記3項目中2項目以上を満たし,他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する.ただし,慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める.注)膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ,リパーゼなど)を測定することが望ましい.〔参考文献1)より引用〕