カレントテラピー 36-6 サンプル

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42 Current Therapy 2018 Vol.36 No.6544Ⅰ 急性膵炎の病態と疫学急性膵炎は,過剰な膵外分泌刺激,十二指腸液の逆流,膵管閉塞,炎症などにより膵内でトリプシノーゲンがトリプシンに活性化され,連鎖的に他の消化酵素前駆体が活性化されて,膵の自己消化が生じる病態であり,無菌的に発症する.急性膵炎の軽症例では自然軽快するものの,重症例での死亡率は10~20%といわれ,迅速に診断し,積極的な輸液などの基本的治療を開始するとともに,成因検索,重症度判定を行い,重症度に応じた治療を行うことが必要である.本邦での発生頻度は49/10万人/年で,男女比は2:1である.成因としては,アルコール(33.5%)と胆石(26.9%)が2大成因であり,その他のものとして特発性(成因特定困難),ERCP後,脂質異常症,遺伝性・家族性,膵管非癒合,薬剤性,ウイルス(ムンプスやHIV)などがある.男性はアルコール性が多く,女性は胆石性が多い.診断と治療の指針として,『急性膵炎診療ガイドライン2015[第4版]』1()以下,ガイドライン2015)が出版されており,そのなかでも大事な項目が“Pancreatitis Bundles”として示されている(表1).適切な時間に適切な介入を行うことが大切である.Ⅱ 急性膵炎の診断と重症度判定1 診断診断は,厚生労働省によって策定された診断基準が使用され,膵酵素の上昇,腹痛,急性膵炎の画像所見のうちの2つ以上を満たすこととされている(表2).診断には他疾患を除外することが必要である.鑑別*1 東京医科大学消化器内科学分野*2 東京医科大学消化器内科学分野主任教授膵疾患の診断と治療─ 21世紀の進歩とUp-to-date急性膵炎の診断と治療(内科)向井俊太郎*1・糸井隆夫*2急性膵炎の軽症例では自然軽快するものの,重症急性膵炎はいまだに致死的な疾患である.迅速に診断し,急速輸液などの基本的治療を開始するとともに,成因検索,重症度判定を行い,重症度に応じた治療を行う.呼吸循環管理,疼痛管理,栄養管理の基本治療を行いながら,必要に応じて蛋白分解酵素阻害薬投与などの薬物療法,動注療法,血液浄化療法を検討する.膵炎の基本治療は輸液と全身管理だが,胆石性膵炎や膵炎後の局所合併症に対しては内視鏡治療を中心としたインターベンション治療が必要となってくる.近年,腹腔内圧亢進に伴い多臓器不全を引き起こす腹部コンパートメント症候群の病態が注目されており,重症急性膵炎における腹腔内圧減圧が重要である.診断と治療の指針である『急性膵炎診療ガイドライン』やPancreatitis Bundleを遵守することは予後改善につながる可能性が高いため,ポイントを十分に理解しておく必要がある.