カレントテラピー 36-4 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 11高齢者心不全の総合理解317合併が多かった.さらには心身の脆弱性(フレイル)が強く,生活の質が低下していることが示され,80歳以上の心不全は独居率が高く(21% vs. 14%),歩行障害が多く(80% vs. 70%),親類から日常生活に援助を得ており(41% vs. 32%),ケアサービスの利用が多かった(28% vs. 12%).また,高齢者において心不全の標準的治療薬である利尿薬とジギタリスの使用率は高かったが,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬,抗アルドステロン拮抗薬の使用率は少なかった13).Ⅴ 高齢心不全の予後と予後予測因子高齢心不全の予後は不良である.EHFSⅡにおける院内死亡率は80歳以上で10.7%,80歳未満では5.6%であった13).日本のATTEND研究では85歳以上の院内死亡率は約13%であった12).高齢心不全では長期予後もきわめて不良でありOlmsted郡からの報告では60歳代での1年および5年生存率は92.6%並びに75.6%であったが,80歳代では80.5%並びに45.6%であった14).また同報告からは死亡率に加えて入院率も高く,平均年齢76.8歳の高齢心不全集団の66.9%,53.6%,42.6%がそれぞれ2回,3回,4回と入院することが示され,それらの入院の原因の約62%が非心血管疾患,約22%が心不全以外の心血管疾患であり,心不全が原因となる入院はわずか約17%であった15).すなわち高齢心不全患者においては心不全以上に併存疾患が予後と関連することが示唆されている.高齢心不全の慢性期の全死亡予測因子は,EHFSⅡでは年齢,糖尿病,血清クレアチニン値の上昇,セルフケアの障害であった.セルフケアの障害と予後との関連は,CHART -2研究においても介護ケア必要度が70歳以上の心不全症例(Stage C)において予後不良と関連することが示されている.また,近年は高齢者総合的機能評価(comprehensivegeriatric assessment)が提唱されており,心不全そのものの評価のみならず,日常生活活動度,認知症の程度,精神行動異常の程度,家族や社会の介護負担能力など,個人の生活個別性を重視した総合的な評価が行われている16).米国の報告では75歳以上の非代償性心不全において,CGAスコアの上昇は2年間の全死亡を予測することが示された.特に認知機能が障害されると予後は不良となることが示された.一方で,予後良好因子としてはACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とスタチンの使用がEHFSⅡのデータで示され,CHART -2研究におけるHFpEF症例においてスタチン使用が予後良好と関連したことと一致する結果であった17).心不全入院の危険因子としては,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患,腎機能障害が報告されている.また,血清アルブミン,総コレステロールおよび総リンパ球を用いて算出される栄養指標であるcontrolling nutritional status(CONUT)スコアが70歳以上の高齢心不全患者(Stage B)では心不全入院を予測することが報告されている18).Ⅵ まとめ超高齢社会の日本において高齢心不全に対する最適な併用療法の選択や至適用量の設定など課題は多く,今後有効な治療戦略の確立が必要である.参考文献1)Heidenreich PA, Albert NM, Allen LA, et al;AmericanHeart Association Advocacy Coordinating Committee;Councilon Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology;Council on Cardiovascular Radiology and Intervention;Council on Clinical Cardiology;Council on Epidemiology andPrevention;Stroke Council:Forecasting the impact of heartfailure in the United States:a policy statement from theAmerican Heart Association. Circ Heart Fail 6:606-619,20132)Ambrosy AP, Fonarow GC, Butler J, et al:The global healthand economic burden of hospitalizations for heart failure:lessons learned from hospitalized heart failure registries. JAm Coll Cardiol 63:1123-1133, 20143)Rich MW, Chyun DA, Skolnick AH, et al;American HeartAssociation Older Populations Committee of the Council onClinical Cardiology, Council on Cardiovascular and StrokeNursing, Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia,and Stroke Council;American College of Cardiology;andAmerican Geriatrics Society:Knowledge Gaps in CardiovascularCare of the Older Adult Population:A Scientific State