カレントテラピー 36-4 サンプル page 6/38
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カレントテラピー 36-4 サンプル
Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 9315心不全の新規発症率は加齢と共に上昇することが示され,60歳代の男性(女性)における心不全新規発症率は1.3%(0.7%),70歳代で4.0%(2.2%),80歳代8.3%(7.8%)であった5).Multi-ethnic Study ofAtherosclerosis(MESA)からは,心不全発症には人種差が存在することが報告されている6).白人の新規心不全発症2.4/1,000人年に比べて,アフリカ系アメリカ人は4.6/1,000人年と高い一方で,アジア人(中国系アメリカ人)においては1.0/1,000人年と低いことが示されている.アフリカ系アメリカ人の心不全発症率が高い理由としては,高血圧と糖尿病の有病率の高さに加えて社会経済的要因の寄与が説明されている.近年,英国から,社会の高齢化に伴う心不全粗発症数の増加の一方で,年齢性別調整後の心不全発症数は経年的に減少していることが報告されている.英国の人口構成に合わせて年齢と性別を調整した400万人の一般住民データであるClinicalPractice Research Datalinkの報告では,心不全の年間粗発症者数は2002年の170,727人から2014年には190,798人へと約12%増加したと推計されている.また,心不全の発症時年齢が2002年では76.5歳であったのに対して,2014年では77歳と英国においても心不全患者集団が高齢化していたが,年齢や性別を調整すると2002年から2014年に掛けて心不全発症者数は男女共に約7%(358から332/10,000人年)減少したと報告された7).日本における心不全の正確な発症データは存在しないが,2013年は日本人の人口において65歳以上は3,190万人であり,米国の65歳以上の心不全発症率が年間1/100人から推計すると,65歳以上では年間約30万人が新規に心不全を発症し,2025年には年間37万人まで増加すると推定されている8()図1).Ⅲ 高齢心不全の有病率世界の心不全の有病者数は2,300万人と推定されている2).日本における心不全の有病率に関する正確なデータはないが,約1~2%と推察されている9).心不全の有病率は発病率と同じく加齢と共に増加する(図2).米国のNational Health and NutritionExamination Survey(NHANES)における年齢別の心不全有病率は40~59歳の男性(女性)で1.5%(1.2%),60~79歳で6.6%(4.8%),80歳以上で10.6%(13.5%)であった.同様に欧州(オランダ)のロッテルダム研究の報告では65~74歳では4%,75~84歳では9.7%,85歳以上では17.4%であった10).わが国において年齢別の心不全有病率に関するデータはないが,心不全とその高リスク群を連続登録した大規模心血管疾患観察研究であるChronic00.050.10.150.20.250.30.35(100万人)0.4Year65歳以上の割合(%)1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 20309.1 12.1 17.4 23.0 29.1 31.683.2 93.4 103.7 116.64.9 5.7 7.1日本の総人口(/100万人)117.1 123.6 126.9 128.1 124.1図1日本における65歳以上の心不全推定発症数〔参考文献8)より引用〕