カレントテラピー 36-4 サンプル

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8 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4314Ⅰ はじめに心不全はすべての心血管疾患の終末像である.心不全は加齢と共に有病率および発病率は増加するため,超高齢社会の日本においても公衆衛生上,きわめて重要な疾患である.米国の心不全医療費は現在,年間3兆円であり,社会の高齢化に伴い2030年には7兆円まで増加すると推計され医療経済にもきわめて大きな負担となる1),2).2013年にはAmericanHeart Failure Association(AHA)/American Collegeof Cardiology(ACC)/American GeriatricsSociety(AGS)から高齢心血管疾患に関する合同ステートメントが発表され3),高齢心不全におけるデータの蓄積が必要であると提言された.また2016年には,日本心不全学会ガイドライン委員会から『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』が発表された4).本ステートメントでは高齢者を後期高齢者(75歳以上)と定義し,高齢心不全の特徴を,1.コモン・ディジーズであり,その絶対数がさらに増加してゆく,2.根治が望めない進行性かつ致死性の悪性疾患である,3.その大半が心疾患以外の併存症を有することである,と明示して高齢心不全の重要性と治療戦略の確立の必要性が強調されている.Ⅱ 高齢心不全の発症率心不全の新規発症率に関して米国ではいくつかの報告があり,一般住民の観察研究であるAtherosclerosisRisk in Communities(ARIC)研究では1年毎に約915,000件が新規に心不全を発症すると推計されている5).また,フラミンガム研究においては,*1 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学特任講師*2 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学准教授*3 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学教授高齢者の心不全の早期発見・対策・治療─健康寿命の延伸に向けて高齢心不全患者の疫学後岡広太郎*1・坂田泰彦*2・下川宏明*3心不全はすべての心血管疾患の終末像である.心不全の有病率および発病率は加齢と共に急激に上昇する.心不全の予後は改善したが依然,死亡率・入院率・再入院率は高い.高齢心不全は世界共通の課題であり世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本は心不全パンデミックに突入している.高齢心不全の特徴は,左室駆出率(ejection fraction:EF)が保持された心不全(heartfailure with preserved ejection fraction:HFpEF)が多いこと,併存疾患を合併する例が多いことである.また,心身の脆弱性(フレイル)を認めることも多く,心疾患の治療に加えて併存疾患の管理も重要である.β遮断薬やレニン・アンジオテンシン系阻害薬,利尿薬などの標準的治療薬が使用されるが,高齢心不全に限ったエビデンスは乏しく,最適な併用療法の選択や至適用量の設定など課題は多い.特にHFpEFに対する有効な治療戦略は十分に解明されていない.