カレントテラピー 36-4 サンプル

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カレントテラピー 36-4 サンプル

高齢者の心不全の早期発見・対策・治療─健康寿命の延伸に向けて高齢者の大動脈弁狭窄症に対するTAVI慶應義塾大学医学部循環器内科専任講師林田健太郎経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheteraortic valve implantation:TAVI)は周術期リスクが高く外科的大動脈弁置換術(surgicalaortic valve replacement:SAVR)の適応とならない高リスクな患者群に対して,より低侵襲な治療として開発されてきた.2002年にフランスでfirst in manが施行されて以来,全世界で30万人以上が治療を受けている.本邦でも2013年に薬事承認を受け,現在までに一万例以上が治療されている.実施施設も急速に拡大しており,現在国内136施設(2018年2月現在)が認定を受けている.本邦における臨床成績として,OCEAN -TAVI registryは国内14施設が参加し,日本の全症例の30~40%をカバーしているが,その初期成績として2013年10月から2016年7月までに登録された1,613例において30日死亡率は1.7%であり,海外データと比較しても非常に良好な成績を収めている.本邦特有の体格や弁輪の小さい患者においてもTAVIの安全性と有効性が確認された.また近年外科手術が高リスク患者のみならず,中等度リスク患者に対するTAVIとSAVRのランダム化比較試験(RCT)が施行されているが,TAVIはSAVRに対し同等,もしくはより低い死亡率を達成したため,現在中等度リスクの患者に対するTAVIは,米国のガイドライン上classⅡaとなっている.また2017年に発表されたヨーロッパ(ESC/EACTS)のガイドラインでは,ついにincreased risk(STSまたはEuroSCOREⅡ>4)の患者に対するTAVIがclassⅠとなり,75歳以上,経大腿(transfemoral:TF)アプローチ可能,弁輪が小さい例などがTAVIfavorとされている.また現在米国を中心に,問題なく開心術が可能な低リスク患者におけるTAVIとSAVRのRCTであるPARTNER 3試験が開始し,本邦でも当院を含む3施設が参加している.当初は高リスク患者に対する治療として生まれたTAVIであるが,すでに欧米では中等度リスク患者に対し適応が広がっており,急激に症例数が増加した結果,米国ではTAVI症例数がSAVR症例数を超えている.今後PARTNER 3試験の結果によってTAVIが大動脈弁狭窄症患者の治療の第一選択になり得る可能性を示唆しているが,一方でより長期の弁の耐久性データ,至適抗血栓療法の確立などの課題も残っており,今後の更なる良好な成績の追求が必要である.Current Therapy 2018 Vol.36 No.438983