カレントテラピー 36-4 サンプル page 30/38
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カレントテラピー 36-4 サンプル
80 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4386際困難であることも多いので,安易にivabradineを使用してしまうことも今後想定される.その意味で交感神経と独立に心拍数を低下させることによる予後改善効果について詳細を知っておく必要がある.図3に示したのはSHIFT試験のサブ解析8)であり,エントリー時の心拍数により層別化したものであるが,いくつか興味深い点がある.まず心血管死亡はivabradine追加により抑制されていないことである.つまり心拍数低下の単独効果は心不全の再入院予防には有用であるが,β遮断薬の代わりになるものではない.欧米のガイドラインではクラスⅡaということで,ARNIより控えめな推奨度になっているのはその含みもあるかと思われる.また,SHIFT試験は心拍数70以上でのエントリーであるが,そのなかでもivabradineが心血管イベントを抑制しているのは心拍数80以上の群のみである.この群ではivabradine投与28日後に心拍数は概ね70前後まで低下している.すなわち心拍数が80というのは不適切に高く,70にまで下げる意味は十分ある.一方で,ベースラインの心拍数が70~80の場合,ivabradine投与28日後の心拍数はやはり低下してこちらは60前後にまでなっているが,そのような心拍数低下の影響は心血管イベントの抑制にはつながっていない.したがって,ivabradineの良い適応とは真にβ遮断薬の忍容性がなく,そして心拍数がどうしても80を切らない洞調律収縮不全患者ということになるかと思われる.Ⅳ SGLT2阻害薬さて,最近話題の糖尿病治療薬SGLT2阻害薬である.この薬剤は図4に示すように糖尿病患者において動脈硬化性疾患をすでに有しているか,またはそのハイリスクである場合,有意に心不全による入院イベントを予防することがわかっている.エンパグリフロジン(EMPAREG-OUTCOME試験9))とカナグリフロジン(CANVAS/CANVAS-R試験10))で同じ結果が得られたことから,SGLT2阻害薬にクラスエフェクトであろうと思われる.まもなく,ダパグリフロジンによるDECLARE -TIMI58試験11)の結果も明らかとなり,同様であればそのエビデンスはますます強いものとなるであろう.SGLT2阻害薬による心不全予防の機序に関してここに詳述するスペースはないが,その利尿作用が重要であると思われる.われわれは重症心不全患者においてカナグリフロジンの利尿作用が既存の利尿薬に相加的に作用し,静注強心薬からの離脱を可能にした症例を報告した12).今後はSGLT2阻害薬による心不全治療における有用性を検討していくことになると思われる.すでにダパグリフロジンのDAPA -HF試験13),エンパグリフロジンのEMPEROR -HF試験14)が開始されている.両試験は非糖尿病患者の心不全もエントリーしているうえ,EMPEROR -HF試験では収縮不全に加えて拡張不全abSHIFT試験Ifチャネルを抑制すると洞結節のペースメーカー細胞のphase 4脱分極傾斜が緩やかになり心拍数が減少するIvabradineプラセボ月PATIENTS WITH PRIMARYCOMPOSITE ENDPOINT(%)4030201000 6Placebo(937 events)Ivabradine(793 events)0Diastolicdepolarization-20IvIv ExtracellularIntracellularK+?? Na+??????IvIvIvIfmVHR, 0.82(95%Cl, 0.75-0.90); -60p<.000112 18 24 30図2収縮不全+洞調律(HR>70)に対する洞結節Ifチャネル阻害薬ivabradineの効果2016年欧州・米国のガイドラインアップデートでクラスⅡa,レベルB.〔参考文献7)より引用改変〕