カレントテラピー 36-4 サンプル

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66 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4372リシノプリル群:1.07;0.82~1.40(p=0.596)〕(図2).さらに,心不全後の死亡がHFpEFでは29.2%認められ,HFrEFでは41.9%認められた(p<0.001,追跡期間中央値1.74年).死亡に関しては薬剤間の差は認めなかった(図3).この結果からも,高血圧患者における心不全(HFrEF,HFpEFとも)発症予防において利尿薬の果たす役割は大きいと考えられる.また,前述のSPRINT研究でも第一選択薬としてサイアザイド系利尿薬が推奨されている.Ⅴ おわりに左室収縮力は後負荷の影響を強く受けるため,高血圧が左室収縮機能を抑制し,心不全を増悪させる.また,高血圧は左室リモデリングを促進し,心筋障害を進展させるため,高血圧管理は長期予後を改善するために非常に重要である.心不全治療に関しては今までの大規模臨床試験の結果から多くの知見が得られており,日本循環器学会の慢性心不全治療ガイドライン6)にも反映されている.高血圧合併心不全患者に使用する降圧薬に関しては,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などのレニン・アンジオテンシン系阻害薬は,心不全症状の有無や左室機能障害の程度にかかわらず,慢性心不全や心筋梗塞後の長期予後を改善し,心不全による入院頻度を減少させる.また,β遮断薬は心不全症状の有無にかかわらず,左室機能障害を有する心不全患者の予後や入院の頻度を改善させる.また,利尿薬はうっ血の治療や予防に有用である.さらに,アルドステロン拮抗薬は標準治療を受けている左室機能障害による重症心不全患者の予後を改善させる.なお標準的心不全治療のみで十分な降圧効果が得られない場合にはジヒドロピリジン系Ca拮抗薬を追加することが有用とされている.一般に高齢者は多病であり,同じ年齢であっても生理機能の個人差が大きいことから,前記のように降圧程度に関しては特に配慮が必要と考えられる.また,心不全予防への効果を考えるとともに,副作用に関しても注意が必要である.ポリファーマシーの観点からも可能であれば,合剤などの使用も望ましい.高齢者においては最近でも今回取り上げたSPRINT試験などに代表されるように新たな知見が追加されており,これらを踏まえた心不全の早期発見・対策・治療が望まれる.0.000 1 2 3 40.100.200.300.400.500.600.000.100.200.300.400.500.60Years to Death0 1 2 3 4Years to DeathMortality Rate for Reduced(<50%)EFby Treatment GroupACumulative Mortality RateCumulative Mortality RateMortality Rate with Preserved(≧50%)EFby Treatment GroupCリシノプリルアムロジピンクロルタリドンNo. at Risk921311736475113475582344047222826リシノプリルアムロジピンクロルタリドンNo. at Risk98110117718371515042302626211515図3 心不全の各タイプの予後Solid line:クロルタリドン,Dashed and dotted line:アムロジピン,Dotted line:リシノプリル〔参考文献5)より引用〕