カレントテラピー 36-4 サンプル

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64 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4370改善に有効であるか, について検討したのがSPRINT試験のサブ解析2)である.厳格治療群は1,317人(平均年齢79.8歳),標準治療群が1,319人(平均年齢79.9歳)であった.厳格治療群の血圧は123.4/62.0mmHgで,標準治療群の血圧は136.2/67.2mmHgであり,eGFRは63.4mL/分/1.73m2と63.3mL/分/1.73m2であった.この試験において定義されたfrailty indexが0.21以上であったフレイルの患者は33.4%と28.4%であり,歩行速度が0.8m/s以下であった患者の割合は28.2%と28.0%であった.降圧薬は開始時で両群とも1.8剤ずつ,終了時で厳格治療群は2.8剤,標準治療群は1.8剤であった.試験は一時エンドポイントである複合心血管イベント(心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中,心不全,心血管死亡)が厳格降圧群で有意な低下を認めたため,3.26年で早期終了となった.一時エンドポイントである複合心血管イベント(心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中,心不全,心血管死亡)は厳格治療群において標準治療群よりも有意に少なかった(2.59%/年 vs. 3.85%/年,ハザード比0.66,95%CI 0.51~0.85,p=0.001).治療必要数は27人であった.また,二次エンドポイントである心不全に関しても,厳格治療群において標準治療群よりも有意に少なかった(0.86%/年vs. 1.41%/年,ハザード比0.62,95%CI 0.40~0.95,p=0.03).その他,全死亡(1.78%/年 vs. 2.63%/年,ハザード比0.67,95%CI 0.49~0.91,p=0.009)に関しても厳格治療群において標準治療群よりも有意に少ないという結果であった.重篤な有害事象の発症率に有意差はなかった(48.4% vs. 48.3%,ハザード比0.99,95%CI 0.89~1.11,p=0.90).重篤な有害事象のなかの,低血圧(2.4% vs. 1.4%,ハザード比1.71,95%CI 0.97~3.09)や失神(3.0% vs. 2.4%,ハザード比1.23,95%CI 0.76~2.00),電解質異常(4.0% vs. 2.7%,ハザード比1.51,95%CI 0.99~2.33),急性腎障害/急性腎不全(5.5% vs. 4.0%,ハザード比1.41,95%CI 0.98~2.04)などに関しては厳格治療群において標準治療群よりも多く,外傷を伴う転倒は少なかった(4.9% vs. 5.5%,ハザード比0.91,95%CI 0.65~1.29)が,いずれにおいても有意差を認めなかった.このSPRINT試験のサブ解析においては,75歳以上の高齢高血圧患者に対しても収縮期血圧120mmHg未満を目指す厳格降圧のほうが,140mmHg未満を目指す標準降圧に比べて生命予後を改善することが示されており,心不全発症の減少が複合心血管障害の減少に寄与していた.後期高齢者を対象にして降圧治療の効果を検討した大規模臨床試験としてはHYVET3)試験が有名である.HYVET試験は80歳以上の高血圧患者を対象に,インダパミド(徐放性利尿薬)を第一選択薬として降圧治療の有用性を検討し,後期高齢者でも降圧治療により脳心血管合併症が減少することが示された試験であった.しかし,プラセボ群の血圧が159/84mmHgであったのに対し,降圧治療群の血圧が144/78mmHgであったことから,後期高齢者に対する140mmHg以下への降圧に対しては議論が残されていた.本試験は,サブ解析ではあるが対象患者数は多く解析に耐えられるものであり,75歳以上の高齢者の降圧に関して重要な示唆を含んでいると考えられる.また,本試験で厳格な降圧による有用性が示されたのが,HYVET試験などで降圧効果が示された脳卒中などの脳心血管合併症ではなく,心不全であったということにも注意が必要である.後期高齢者において降圧による後負荷の軽減は,特に心不全の抑制に有用であった可能性が考えられる.Ⅳ ALLHAT試験のサブ解析高血圧患者に対して降圧治療を行う際に,どのような降圧薬を選択すると心不全発症が抑制できるかについても考察が必要である.心不全は左室拡張機能不全による心不全(heartfailure with preserved left ejection fraction:HFpEF)と,左室収縮機能不全による心不全(heartfailure with reduced left ejection fraction:HFrEF)とに大別され,高血圧患者はどちらのタイプにも罹患する.