カレントテラピー 36-4 サンプル page 16/38
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カレントテラピー 36-4 サンプル
Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 61367Ⅰ はじめに高血圧は心不全の基礎疾患として最も頻度が高い疾患であり,加齢とともに高血圧罹患率が上昇することが知られている.また,高血圧患者における心不全発症率が降圧治療により減少することは大規模臨床試験の結果から明らかとなっている.しかし,どこまで降圧するのが良いかについては以前から議論のあるところである.また,心不全発症抑制のためにどのような降圧薬を使用するかについてもさまざまな検討がなされている.ここでは高齢高血圧患者や心不全発症抑制に関する大規模臨床試験について紹介する.Ⅱ SPRINT試験フラミンガム試験などの観察研究により,収縮期血圧120mmHg以上から心血管疾患が増加するということは知られていたが,降圧薬を用いて120mmHgまで下げることの有益性については明らかではなかった.この点について,話題になったSPRINT試験1)とそのサブ解析2)について紹介する.SPRINT試験での対象患者は収縮期血圧が130~180mmHgの50歳以上で,ひとつ以上の心血管疾患のリスク因子を有する高血圧患者9,361人であった.この試験で規定された心血管疾患のリスク因子は,症候性や無症候性の心血管疾患(脳卒中を除く),eGFRが20~60mL/分/1.73m2の慢性腎臓病(chronickidney disease:CKD,多発性嚢胞腎を除く),フラミンガム試験での10年心血管リスクスコアが15%以上,75歳以上などである.脳卒中既往と糖尿病罹患者は除外されていた.収縮期血圧120mmHg以下を目標とする厳格降圧群と,収縮期血圧140mmHg以下(135~139mmHgを目標に薬剤量を調整)を目標とする標準降圧群に対象患者を割り付けて薬物治療を行った.降圧薬としては,心血管疾患の発症* 大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学助教高齢者の心不全の早期発見・対策・治療─健康寿命の延伸に向けて高血圧伊東範尚*高血圧は高齢者において有病率が高い疾患であり,高血圧を適切に管理することは心不全における後負荷の影響を少なくし,左室リモデリングを予防するためにも非常に重要である.しかし,高齢高血圧患者においてどの程度まで降圧するのが良いかについては,以前から議論が尽きないところである.また,心不全の予防のためにどのような種類の降圧薬を使用するのが良いかについても,さまざまな検討がなされている.本稿では高血圧を合併した高齢高血圧患者に関する大規模臨床試験や,高血圧患者の心不全発症抑制に関する大規模臨床試験について紹介し,高血圧を合併した高齢者心不全の予防や治療について述べる.