カレントテラピー 36-4 サンプル page 12/38
このページは カレントテラピー 36-4 サンプル の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 36-4 サンプル
36 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4342proBNPは620pg/mL減少すると報告されている8).以上よりカテーテルアブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールより予後改善する可能性が示唆されている.Ⅲ 心房細動のレートコントロールの実際ESC2016ガイドラインによる急性心不全の心房細動レートコントロールに用いる薬剤は,EF<40%またはうっ血性心不全の徴候を認める場合には最小用量のβ遮断薬,EF>40%の場合にはβ遮断薬,ジルチアゼム,ベラパミルの使用を推奨している.血行動態が不安定,またはEFが高度に低下している場合にはアミオダロンも検討される.効果が乏しければジゴキシンを追加する.β遮断薬はレートコントロール治療において重要な薬剤である.β遮断薬はレートコントロールのみでなく,神経体液性因子の亢進抑制作用もあるため,レートコントロールに使用する薬剤のなかで最も心不全の予後を改善することが,台湾におけるナショナルデータベースの解析から報告されている9).ただ,β遮断薬は洞調律下では心機能低下を伴う心不全の予後を改善するが,心房細動症例においてはβ遮断薬投与の有無で死亡率に差がないとの報告もある10).その原因として心房細動合併例では非合併例に比較して,さらに心機能が低下しておりβ遮断薬に反応しにくい可能性があること,また安静時に過度に徐脈になったり,労作時に適切な心拍上昇にならないことなどがその説明とされている.心不全合併心房細動においてはβ遮断薬投与において心拍数を下げすぎないよう,こまめに投与量を調整すべきと考えられる.しかし,急性心不全を合併している場合は,いきなり高用量のβ遮断薬を投与するとかえって心機能が低下することがあるため,短期間でのレートコントロールが難しい.しかし近年,J-Land studyで,短時間作用型β遮断薬,ランジオロールを心機能低下例の頻脈性不整脈(心房細動,心房粗動)に対し少量から投与することが安全かつ有用であることが報告された11).これを受け,ランジオロールは2014年に日本循環器学会ガイドラインが改訂されるにあたり,心不全のある心房細動のレートコントロール治療にclassⅠで推奨されている.心不全急性期には,まずこの短時間作用型β遮断薬の静注薬の低用量投与(1~10μg/kg/分)でコントロールを行い,経口β遮断薬につないでゆく治療法も検討される(図2).それでは適切な心拍数とはどのくらいなのだろうか.RACEⅡ試験で,緩やかな心拍数コントロール(安静時HR<110bpm)と厳格な心拍数コントロール(安静時HR<80bpm)をランダム化し,心原性死亡,心不全による入院,塞栓症や致死性不整脈の発症などを一次エンドポイントとして比較したところ,両群間で有意な差が認められず,必ずしも厳格早期に低用量での併用も考慮する目標心拍数に達しない場合や症状が続く場合には追加医療を行うβ-blockerジルチアゼムベラパミル追加目標安静時心拍数<110bpm(徐脈は避ける)LVEF?40%β-blockerジルチアゼムベラパミルジゴキシンLVEF<40%β-blocker ジゴキシンジゴキシン追加ジゴキシン追加ジゴキシン追加β-blocker追加図2心房細動のレートコントロール〔2016 ESCガイドラインより引用改変〕