カレントテラピー 36-4 サンプル

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34 Current Therapy 2018 Vol.36 No.4340Ⅰ 心房細動合併心不全の疫学・予後心房細動は,加齢に伴い,心房負荷・拡大から心房の線維化・変性をきたすことを背景に出現してくる不整脈であり,加齢とともにその有病率は増加し,80歳以上では1割以上に認めるといわれる.一方,心不全においても最も合併が多く治療を要する不整脈は心房細動で,その合併率は20~40%といわれ,心不全が重症化するほどその合併率は上昇する.また心不全には左室駆出率が低下した収縮性心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)と,左室駆出率は保持されているが拡張期に異常がみられる拡張性心不全(heart failurewith preserved ejection fraction:HFpEF)に分類されるが,心房細動の合併率はHFrEFもさることながらHFpEFに多いことが報告されている1).高齢者心不全ではHFpEFの頻度が比較的高く,すなわち高齢心不全患者において心房細動は頻度の高い合併症である.心房細動と心不全は負の相互関係にある(図1).心房細動による心不全の悪化には主に2つの理由が挙げられる.一つは,頻脈性心房細動による,頻脈誘発性心筋症の機序を介して心機能の低下が起こり得ること,もう一つは拡張後期の能動的な心房収縮が消失することと頻脈に伴う拡張時間の短縮による左室充満の障害と,その結果もたらされる心拍出量の低下である.メタ解析より,慢性心不全に心房細動を合併することは,左室収縮能の良し悪しにかかわらず,独立した予後規定因子であると報告されている.またFraminghamHeart Studyでは心房細動例に心不全を合併するほうが,心不全例に心房細動を合併するより予後に関する影響が大きいことが報告されている2).*1 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門病院助教*2 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・薬理学講座臨床薬理学部門教授高齢者の心不全の早期発見・対策・治療─健康寿命の延伸に向けて心房細動滝 瑞里*1・今井 靖*2心房細動は年齢とともに罹患率が上昇し,80歳以上の高齢者ではその罹患率は10~20%と高い.心房細動は心不全に高頻度に合併するとともに,心不全の増悪因子である.そのために両者に対し,それぞれ適切な治療戦略が必要である.心房細動に対する治療戦略は,これまで抗不整脈薬によるリズムコントロールとレートコントロールで予後に差がないと報告されていたが,最近,カテーテルアブレーションの進歩により,アブレーション治療によるリズムコントロールはレートコントロールより予後改善が望める可能性が報告されている.ただ高齢者の場合,左房のリモデリングが進行している例が多く,アブレーション治療のメリットよりも合併症のデメリットが上回ることもありうるため,個々で治療方針は検討する必要がある.心房細動合併の高齢者心不全の治療戦略について検討する.