カレントテラピー 36-12 サンプル page 21/28
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カレントテラピー 36-12 サンプル
86 Current Therapy 2018 Vol.36 No.121234ラウドシステムとIPSec+IKE対応の携帯型VPNルーターを新規開発した8),9).さらに改良を加えて2018年現在,移動体通信網で施設外利用が可能なプライベートクラウドシステム(View Send RAD online)を導入し運用している(図1).現在,外科,整形外科,脳外科,循環器科が救急患者の画像伝送を活用しており,月間10例前後の症例がオンコール待機医師などに画像伝送されている.一般の遠隔画像診断は専用回線を用いた固定端末で行われることが多く,外出先や移動端末で対応することが困難であるが,移動体通信網を用いた携帯端末による遠隔画像診断システムによって施設外でもセキュアに遠隔画像診断が可能となる.本システムは救急医療における遠隔画像診断の迅速性を高めると同時に救急担当医師の負担軽減に寄与する.本システム導入後は夜間休祭日の病院からの問い合わせに対してのオンコール待機医師の時間外出勤は約75%も減少した.2 他の医療施設への相談施設間連携での遠隔医療の利用は,院内発症あるいは救急外来受診の救急患者を他施設の医師へコンサルテーションする際に用いられる.具体的には,①他施設への治療依頼,②遠隔画像診断依頼や搬送の適応の判断の相談,③治療時の遠隔モニタリングなどで用いられる.本邦では,脳卒中ストロークバイパスの連携,虚血性心疾患の緊急処置や外科緊急手術の適応の相談などに施設間連携の遠隔医療は活用されている.特に脳卒中や急性大動脈疾患では,搬送施設で急性期の治療ができない場合があり,高次施設への速やかな情報共有と搬送が重要である.脳卒中ではストロークバイパスの概念が確立されており,高次施設へ画像伝送し,搬送や治療の適応を検討するtelestrokeが注目を浴びている.また,北海道では医療圏が広域なため,急性大動脈疾患症例の搬送に長時間を要する問題を解消するために,旭川医科大学では2次医療圏を超えて救急搬送されてくる急性大動脈疾患症例が搬送先に到着後迅速に治療を開始できるよう,連携6病院とクラウドモバイル端末を用いて画像情報を患者到着前に把握するシステムを構築している.患者到着から手術室入室までの時間短縮,遠隔トリアージによる不要な搬送の削減,医療コスト低減などの効果が期待できる10).また,離島などの僻地で行われる治療をテレビ会議システムで遠隔モニタリングしてサポートしたり,海外ではHCU患者情報を遠隔のセンターに伝送して管理することなどにも利用されている.この場合,使用されるシステムとしては画像伝送システム,テレビ会議システム,電子カルテやPACSの共有システムなどが挙げられる.群馬県の2次医療圏のひとつである沼田保健医療圏では,平成21年度総務省のユビキタスタウン構想推進事業で遠隔医療ネットワークを構築し運用している.国立がん研究センター東病院およびがん対策情報センター等で開発したView Send ICT社の遠隔医療支援機能付きPACS(View Send RAD)によって,VPN回線で利根沼田広域市町村圏振興整備組合の管轄で医療圏内の7病院と16診療所間を接続した11).本PACSは,カメラ,音声を使用したテレビ会議機能,遠隔読影レポート作成機能などの遠隔医療支援ツールとDICOM準拠のPACSが融合している.医療画像はDICOM形式で伝送して同じ画像を同期させて閲覧しながらアノテーションで問題部位表示や拡大縮小・補正等をお互い操作をするこ図1 外出先からの病院画像閲覧システムの利用胸部外傷による右大量血胸症例.