カレントテラピー 36-12 サンプル

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42 Current Therapy 2018 Vol.36 No.121190Ⅱ 高血圧の概要本邦の高血圧患者数は約4,300万人と推定されており,高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人と推定されている.また,心血管病死亡の約50%,脳卒中罹患の50%以上が,至適血圧(<120/80mmHg)を超える血圧高値に起因するものと推定される.高血圧治療においては,1日6g以下の塩分制限を厳守することとともに,適切な血圧測定と,測定値の解釈,そして治療介入が重要となる.血圧の測定方法として,診察室血圧と診察室外血圧が存在するが,診察室外血圧については,診察室血圧に比べて同等か,それ以上の臨床的価値があると評価されている.診察室外血圧には,家庭血圧と,24時間自由行動下血圧が存在し,両者の測定結果については,各々異なる血圧情報としての価値を有する.家庭血圧については,処方されている降圧薬の効果判定や過降圧を把握するのに有用である.HOMED -BP試験は世界で初めて,家庭血圧測定計の測定値に基づき,降圧目標が設定された研究で,高血圧患者3,518例が通常コントロール群(125-134/80-84mmHg)と厳格コントロール群(125/80mmHg未満)に無作為割付され,心疾患死亡,心筋梗塞,脳卒中などのハードエンドポイントで有意差がみられるかどうかが検討された.結果は,家庭血圧を125mmHg未満に降圧することは実地臨床では困難であるが,家庭血圧を130/75mmHg程度を降圧目標に設定することで,脳心疾患ハードエンドポイントの発症リスクは1%以下に抑えられ,予後が改善する可能性が示唆された1).家庭血圧測定と高血圧治療がリンクすることの重要性が示された研究である.さらに,昨今では家庭血圧測定に加えて,24時間自由行動下血圧計(Ambulatory BloodPressure Monitoring:ABPM)を用いた血圧測定の重要性が提唱されるようになってきている.ABPMは白衣高血圧や,治療抵抗性高血圧,また,夜間高血圧,non -dipper,riserタイプの血圧パターンやmorning surgeと呼ばれる早朝高血圧の検出に有用である2).各測定方法の特性を理解し,その結果を適切に解釈し,治療への介入を行うことが高血圧診療の肝となる.Ⅲ 家庭血圧に関する,遠隔医療のエビデンスそもそも遠隔医療とは,日本遠隔医療学会によると,「通信技術を活用した健康増進,医療,介護に資する行為」と定義されている.遠隔医療については,これまで地域・僻地医療において重要性が叫ばれてきたが,2018年度の診療報酬改定でオンライン診療の項目が新設された.今後は日常診療への実用化と普及に向けて加速度的に技術が進歩していくことだろう.遠隔医療の日常診療介入による効果については,これまで多くの研究結果が示されている.Paratiらは,391例の軽度~中等度高血圧症の患者を,家庭血圧計を用いた遠隔モニタリング群と通常診療群とに無作為割付を行い,6カ月後の正常血圧値の割合,フォローアップ時の治療変更の必要性,生活の質(QOL),費用につき比較したところ,遠隔モニタリング群のほうが,有意に血圧コントロールは良好となり,治療変更の必要性も少なく,QOLも上がり,費用も抑えられた3).また,McManusらは480例の患者を対象に,血圧測定値をトライアルチームへ送信する遠隔モニタリング群と,通常の高血圧治療群とに無作為割付を行った.結果は,遠隔モニタリング群のほうが,通常の高血圧治療群に比べて,6,12カ月後に有意な血圧低下が認められた4).さらに,Omboniらによる,23の無作為割付試験を用いたメタアナリシスによると,家庭血圧遠隔モニタリングを用いた群のほうが,通常の血圧治療群に比べて血圧は有意に低下し,降圧薬の内服量が増量しても服薬アドヒアランスは低下しなかった5).これらの結果は家庭血圧における遠隔モニタリングが,高血圧診療に有効であることを示しているが,その理由としては,「医師がデータを確認している」という事実が,患者のモチベーションを高める効果に繋がり,食生活改善や,服薬アドヒアランスの向上へ結びついていると考えられる.さらに,結果として医療費も抑えることができる可能性も期待される.