カレントテラピー 36-12 サンプル

カレントテラピー 36-12 サンプル page 13/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 36-12 サンプル の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 36-12 サンプル

Current Therapy 2018 Vol.36 No.12 411189Ⅰ はじめに米国の新しい高血圧診療ガイドライン2017(ACC/AHA高血圧診療ガイドライン2017)が発表され,高血圧については厳格なコントロールが求められる時代となった.患者の血圧を把握する方法として,診察室血圧,家庭血圧,24時間自由行動下血圧が存在する.そして,各血圧には基本となる測定方法,タイミング,適切な解釈と治療目標が規定されており,高血圧患者が家庭血圧測定のみで自己管理をする診療には限界がある.また,高血圧診療で重要なことは,持続性である.毎食時の塩分を制限し,適切なタイミングで日々の血圧を測定し,内服を決められた時間に行ってもらうことの繰り返しであり,間欠的なものにならないよう,患者の治療に対するモチベーションを維持することも重要となってくる.つまり,「生活指導→血圧測定→解釈→治療」のサイクルを指導してくれる,高血圧診療に精通した医療環境がアクセスしやすい距離にあり,かつ,患者自身の高血圧治療に対する意欲が続くことが必要である.しかしながら,現状では,そのような医療環境については,地域の偏在が大きく,都市部と比べて,地域・僻地における環境整備はまだまだ不十分であり,アクセスも困難なことが多い.そのため,地域間格差を是正すべく,遠隔医療と呼ばれる医療の提供方法が,ここ最近新たに整備されつつある.本稿では,血圧管理と遠隔医療の重要性と,その現状および将来展望について記載する.*1 阿蘇医療センター内科*2 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門*3 熊本赤十字病院循環器内科*4 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門准教授*5 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授家庭血圧の管理と遠隔医療佐藤智英*1・冨谷奈穂子*2・原田紀子*2池本智一*3・星出 聡*4・苅尾七臣*5米国の新しい高血圧診療ガイドライン2017が発表され,血圧の厳格なコントロールが求められる時代となった.HOMED-BP試験では,家庭血圧測定における降圧目標を130mmHg未満に設定することで,心血管イベント抑制が示され,家庭血圧管理の重要性が示唆された.高血圧診療をより介入しやすいものにするためには,遠隔医療と高血圧診療をリンクさせることも検討される.遠隔医療については,いくつかのエビデンスが示され,有用性が認められている.しかし,デジタル機器の介在による弊害も少なからず存在するため,システムを鵜呑みにせず,十分理解したうえで,活用・普及していく必要がある.現在,自治医科大学では,最新の通信システムを利用し,有用な遠隔医療の実現に向けたエビデンス創出を目指す臨床研究を実施している.今後はIoTを用いた高血圧診療や,われわれが普段使用しているデバイスのアプリケーションが高血圧分野に参入していくだろう.高血圧診療がより質の高いものとなり,結果として致死的血管疾患罹患者の減少や,医療コストの削減にも繋がることが期待される.遠隔医療の現況と展望