カレントテラピー 36-11 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.11 71047動脈硬化の早期診断法と予防対策― 健康寿命延伸をめざして―企画帝京大学臨床研究センター長寺本民生わが国の医療費は42兆円を突破しており,循環器系疾患に関する医療費が19.9%と第一位である.また,高齢社会を迎えたわが国では年金と並び介護に係わる費用が大きく,介護費の約25%は心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)であり,続いて認知症が約20%を占めると報告されている.したがって,わが国においては,健康政策上も国民医療費の観点からもCVD予防が重要な保健対策といえる.また,CVDの多くは動脈硬化という病態が基盤にあり,その発症には生活習慣病が大きく関わっていることは周知のことである.動脈硬化発症に関わる危険因子を列挙すると数十にも上るが,まずは,現在ほぼ確立されている脂質異常症(高LDL -C血症),高血圧,高血糖,肥満,慢性腎臓病などの危険因子対策が動脈硬化予防としては重要であり,関連する各学会では標準的対応策として診療ガイドライン(GL)をまとめている.これらの独立したGLは動脈硬化予防という観点からは,ほぼ目的は共通している.動脈硬化予防のためにはこれらの危険因子に対して包括的に対応することが効果的であり,求められることでもある.一般臨床ではこのような視点から各GLをまとめたツールが必要となってくるが,そのまとめたツールが『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2015』(現在改訂中)である.また,すでに進行した動脈硬化に対する対策は非常に重要であり,それによる発症予防効果は極めて高い.その意味で,動脈硬化の早期診断は,常に意識し,チェックしていく姿勢を確立したいものである.このような基本的な知識のうえに,薬物療法などが考慮されるのであるが,幸いにして,LDL -C対策,糖尿病対策,高血圧対策についてはほぼ確立されつつある.これからはいかに効率よくターゲットとなる患者を検出し,的確な治療へ結びつけ,いかにアドヒアランスよく診療していけるかが問われる時代となろう.さらには,残された危険因子に対する対策もしっかりと見据える必要がある.動脈硬化予防に対する炎症対策が視野に入った感があるが,この分野もさらに突き詰めていく必要がある.また,重要なリスクとして遺伝(体質)の問題がある.これらは今後の課題であり,われわれが動脈硬化予防に対して常に謙虚でなくてはならない理由はここにある.高齢社会を迎え,われわれ医療者には,あらゆる知識と診療技術を駆使して患者の健康寿命をいかに担保するかが問われているように思える.動脈硬化診療の今,そして将来