カレントテラピー 36-11 サンプル page 24/34
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カレントテラピー 36-11 サンプル
Current Therapy 2018 Vol.36 No.11 831123元的作用として抗炎症作用をもつスタチンの投与によりhs -CRPの低下がみられた3).このことからスタチンの心血管イベント低下の機序には,LDLコレステロール(LDL -C)低下作用以外の作用の関与(プラークの炎症反応抑制)があると考えられる.Ⅱ 動脈硬化形成過程における炎症の関与細胞壁の炎症とそれに伴う白血球の血管内皮細胞への接着は動脈硬化の発症に必須であると考えられている4).図1に示すように,動脈硬化症の初期には血液中の単球やリンパ球が傷害を受けた血管内皮細胞に接着,血管内皮下に遊走,サイトカインや増殖因子などを産生する.血管内皮細胞の表面には内皮細胞の傷害の過程において複数の接着分子が誘導される.白血球が内皮傷害部位に浸潤していく過程は,これらの接着分子および液性因子が次々と働くことによって成立している.それでは,生体で動脈硬化を惹起する炎症とはどのようなメカニズムなのであろうか.これについて近年新たに提唱され,認知されてきている機序が以下の通りである5),6).炎症性サイトカインのinterleukin -6(IL -6)やinterleukin -1β(IL -1β)の血管への刺激により内皮細胞における接着分子や各種サイトカインの発現,血管平滑筋細胞の増殖,血小板の凝集,マクロファージにおける組織因子やマトリックス分解酵素(matrixmetalloproteinase:MMPs)の産生などが促進され,動脈硬化性病変の形成やプラーク破綻が生じる.またIL -6の刺激により,プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(plasminogen activator inhibitor:PAI-1)やフィブリノーゲンが肝臓で産生され,これも動脈硬化形成促進に働く.炎症刺激の経路としてはIL -6の上流にIL -1βがあり,I L-1βはNLRP3インフラマソーム(inflammasome)でcaspase-1によりpro IL-1βから活性化IL-1βに変換されることにより生じている(図2).自然免疫は下等生物から高等生物まで保存された生体防御機構で,多数のパターン認識受容体がその応答を中心的に担当している.パターン認識受容体にはNLRP1や,NLRP3,NLRC4,AIM2などがある.パターン認識受容体は特定の刺激を認識すると構造変化を起こし,caspase -1やapoptosis -associatedspeck-like protein containing caspase recruitmentdomain(ASC)などのタンパクと会合し,タンパク複合体を形成する.ASCは,パターン認識受容体とcaspase-1の連結因子で,このタンパク複合体がインフラマソームである.インフラマソームでcaspase -1の近接化が起きることでcaspase -1が活性化され,IL -1などの炎症性サイトカインの活性化を誘導し炎症を惹起する.インフラマソームは微生物や生体異物などさまざまな刺激により活性化され感染防御に働く.一方でコレステロール結晶や,好中球の細胞外での補足,血流の乱れ,低酸素などが刺激因子の種類によっては,Attachment Rolling Arrest and Adhesion DiapedesisSelectins(E-, P-selectin) lgG superfamily(ICAM-1, VCAM-1)Integrins(LAF-1, Mac-1)PECAM-1VE-cadherin図1白血球と血管内皮の相互作用