カレントテラピー 36-11 サンプル page 10/34
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カレントテラピー 36-11 サンプル
20 Current Therapy 2018 Vol.36 No.111060反応が起こり,アテローム形成が促進される(図4).また,NETsが直接内皮細胞を活性化させ,内皮機能障害を生じるとも言われている.また,NETsは重症なアテローム性動脈硬化や心血管イベントのバイオマーカーとしても注目されている.さらに近年,臨床研究においても抗炎症作用により動脈硬化抑制がもたらされることが示唆されている.hydroxymethylglutaryl-CoA reductase(HMGCoA)還元酵素阻害薬(スタチン)は多面的効果として抗炎症作用があるとされている.しかし,LDL -Cが基準範囲内で高感度CRP高値の一次予防患者でスタチンの効果をみた2008年のJUPITER試験では,スタチン内服群で心血管イベントの抑制がみられたが,それがLDL-C低下によるものか,CRP低下によるものであるかは不明であった18).2017年に報告されたCANTOS試験では,心筋梗塞の既往があり高感度CRPが高値である二次予防患者に対して,抗リウマチ薬として用いられる抗IL -1β抗体であるカナキヌマブを用いたところ,脂質は低下しないが,IL -6,高感度CRPが低下し,心血管イベント再発の抑制がみられた19).炎症反応が低下し,脂質とは独立して心血管イベントを抑制したことは,炎症自体が動脈硬化の治療標的になるということを示唆し,今後の新規治療開発が期待されている.Ⅵ おわりに動脈硬化に関連するさまざまな因子について,炎症機転を中心に記述した.近年の研究により,動脈硬化を血管壁の慢性炎症としてとらえる考え方が広く普及してきたが,一方,動脈硬化の発症,進展機リンパ球内膜単球マクロファージIL-1βTh17TypeⅠinterferonコレステロールNEtosis好中球泡沫化細胞NETsNETs樹状細胞内皮細胞の活性化NEtosis壊死性コアアポトーシス細胞図4動脈硬化におけるNETsの役割〔参考文献17)より引用改変〕