カレントテラピー 36-10 サンプル

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12 Current Therapy 2018 Vol.36 No.10938未満,③脆弱性骨折はないが,骨密度がYAMの70%未満または-2.5SD以下,のように骨粗鬆症と診断され,開始される場合と,ⅱ)脆弱性骨折がなく,骨密度が70%以上80%未満の場合,①FRAXRの10年間の骨折確率(主要骨折)15%以上13),②大腿骨近位部骨折の家族歴がある,など,診断基準を補う情報があれば骨粗鬆症治療が開始される.FRAXRは(1)年齢,(2)性別,(3)身長,(4)体重,(5)成人以降の軽微な外傷による骨折歴,(6)両親の大腿骨近位部骨折歴,(7)喫煙の有無,(8)糖質コルチコイド(ステロイド)服用の有無,(9)関節リウマチの既往,(10)その他の続発性骨粗鬆症の既往,(11)アルコール多飲の有無,(12)骨密度値により10年以内の主要骨折確率および大腿骨近位部骨折確率が算出される.骨密度値の項目は必須ではなく,前述の(1)~(11)の質問票のみでも骨折確率が算出できるのが長所である.わが国における椎体骨折の発生頻度の高さを考慮し,カットオフ値は主要骨粗鬆症性骨折確率15%が採用された.しかしながら,75歳以上においては,ほとんどすべての女性がこのカットオフ値を上回ることから,適応は75歳未満とすること,また,50歳台を中心とする世代においてはより低いカットオフ値を用いた場合でも現行の診断基準に基づいた薬物治療が推奨される集団をカバーしきれないなどの限界も明らかになっている.また,この薬物治療開始基準は原発性骨粗鬆症に関するものであるため,FRAXRの項目のうち関節リウマチ,糖質ステロイド,続発性骨粗鬆症にあてはまる者には適用されず,これらの項目はすべて「なし」である症例に限って適用される.Ⅴ おわりに骨粗鬆症の予防と治療の目的は骨折発生を抑制することであり,その治療開始基準となるものが「診断基準」である.前述の通り,その診断基準は時代背景や数々のエビデンスとともに変遷してきた.わが国の骨粗鬆症診断基準は以前から既存骨折を重視していたが,2012年の診断基準ではそれがさらに重要視されるものとなった.骨折を生じやすい「状況証拠」と考えられる骨密度低下状態より,「物的証拠」である既存骨折が重要視されたその背景にも注目すべきであろう.われわれは『診断基準』の変遷の意義を十分に理解し,骨折予防のために治療すべき対象を把握することが重要なのではないだろうか.参考文献1)Albright F, Reifenstein EC Jr:Parathyroid glands and metabolicbone disease. Williams and Wilkins Baltimore, 19482)Consensus development conference:Prophylaxis and treatmentof osteoporosis. Am J Med 90:107-110, 19913)Assessment of fracture risk and its application to screeningfor postmenopausal osteoporosis. Report of a WHO StudyGroup. World Health Organ Tech Rep Ser 843:WorldHealth Organization, Geneva:1-129, 19944)折茂 肇,杉岡洋一,五來逸雄ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準.日骨代謝誌 13:113-118, 19955)折茂 肇,杉岡洋一,福永仁夫ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版).日骨代謝誌 14:219-233, 19976)折茂 肇,林 泰史,福永仁夫ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版).日骨代謝誌 18:76-82, 20017)診断基準の改訂に向けて―骨粗鬆症診療の新たな展開をめざして.第14回日本骨粗鬆症学会シンポジウムREPORT. OsteoporosisJpn 20:629-632, 20128)Klotzbuecher CM, Ross PD, Landsman PB, et al:Patientswith prior fractures have an increased risk of future fractures:a summary of the literature and statistical synthesis.J Bone Miner Res 15:721-739, 20009)Kanis JA, Johnell O, De Laet C, et al:A meta-analysis ofprevious fracture and subsequent fracture risk. Bone 35:375-382, 200410)Fujiwara S, Kasagi F, Masunari N, et al:Fracture predictionVertebral fracture in Japanese men and women. J BoneMiner Res 18:1547-1553, 200311)Colon-Emeric C, Kuchibhatla M, Pieper C, et al:The contributionof hip fracture to risk of subsequent fractures:dataform two longitudinal studies. Osteoporos Int 14:879-883,200312)Ojo F, Al Snih S, Ray LA, et al:History of fractures as predictorof subsequent hip and nonhip fractures among orderMexican Americans. J Natl Med Assoc 99:412-418, 200713)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(編):骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版.ライフサイエンス出版,東京,2011