カレントテラピー 36-10 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.10 11骨粗鬆症の診断と脆弱性骨折の疫学9372 骨密度計測国際的には多くのガイドラインが大腿骨近位部または腰椎を測定部位としている.このような状況を考慮し,2012年度診断基準では骨密度測定部位は原則として腰椎または大腿骨近位部とされた.ただし,両部位の測定が困難な場合には,橈骨,第二中手骨の骨密度もよいとされている.骨量減少(骨減少)の定義については,骨量減少は将来骨粗鬆症を発症するリスクが高く,一部は薬物治療の対象ともなる.2012年度診断基準では,国際基準と同じ-2.5SDより大きく-1.0SD未満の場合が骨量減少と定義された.さらに,大腿骨近位部で20歳以降の骨密度減少率が大きいこと,また国際基準に合わせる目的で,大腿骨近位部のみYAMの基準が20~29歳に変更された.1995年度版から2000年度版までの診断基準では脊椎X線像による骨粗鬆化所見も骨密度値とともに使用されていた.今回の改訂にあたり,①骨密度測定法が普及したこと,②骨粗鬆化の判定は客観的でなく,定量性に欠けること,③国際的には使用されていないこと,④近年,デジタル化の普及により脊椎X線写真による判定が困難となったことなどから,今回の診断基準から削除された.また,定量的超音波測定法(quantitative ultrasound:QUS)は,骨折リスクを予測可能であり,骨粗鬆症のスクリーニングのための検査法としての有用性が報告されている.しかし,骨密度とは相関関係はあるものの,骨密度そのものを測定しているのではないこともあり,診断基準としてQUSの採用は見送られた.Ⅳ 骨粗鬆症の診断と薬物治療原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準は『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』13)に示されている(図2).基本的に骨粗鬆症と診断された場合には薬物治療を導入すべきであり,骨量減少例であっても高い骨折リスクを有する場合にはやはり薬物治療を考慮すべきと考えられていることから,ほぼ『原発性骨粗鬆症の診断基準』と同義であるといえよう.薬物治療はⅰ)診断基準により,①脆弱性骨折(椎体骨折または大腿骨近位部骨折)がある,②その他の脆弱性骨折(肋骨,骨盤,上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨の骨折)があり,骨密度がYAMの80%薬 物 治 療 開 始FRAXRの10年間の骨折確率(主要骨折)15%以上大腿骨近位部骨折の家族歴ありBMDがYAMの70%未満BMDがYAMの80%未満BMDがYAMの70%以上80%未満ないあるない脆弱性骨折(大腿骨近位部または椎体以外)脆弱性骨折(大腿骨近位部または椎体骨折)ある図2骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準椎体および大腿骨近位部の既存骨折が薬物治療開始基準として重視されている.また,大腿骨近位部骨折の家族歴やFRAXの項目が加わり,より「骨折リスク」が重視されるようになった.〔参考文献13)より引用改変〕