カレントテラピー 36-10 サンプル page 7/30
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カレントテラピー 36-10 サンプル
10 Current Therapy 2018 Vol.36 No.10936る,②診断基準の適用を「X線上椎体骨折」から「脆弱性骨折」に変更する,③脊椎X線像での骨萎縮度を骨粗鬆化に用語を変更し,それに伴い,④脊椎X線像による「骨萎縮なし」,「骨萎縮度Ⅰ度」,「Ⅱ度以上」の区分を,脊椎X線像での「骨粗鬆化なし」,「疑いあり」,「あり」に変更する,⑤男性の骨粗鬆症の診断基準も女性に準じて導入したことであった6()表2).Ⅲ 2012年以降の診断基準─「状況証拠」より「物的証拠」─現行の診断基準である2012年度診断基準は,国際的な整合性を目指すとともに,新たな知見に基づき,また2000年度診断基準の問題点について検討を加え,作成された7).また,本診断基準の特徴として,鑑別診断の重要性を冒頭にうたっていることである.鑑別診断の意義としては①鑑別診断を進めることが悪性腫瘍や内分泌疾患の発見につながり,患者の予後を左右する可能性があること,②続発性骨粗鬆症の原因を把握し,除去することが原疾患のみならず,骨脆弱の管理にも役立つこと,さらに③続発性骨粗鬆症の原因疾患がもつ骨代謝に対する影響を把握することが骨粗鬆症の治療方針決定に有用であるためである.そのため,ステロイド性骨粗鬆症などの「続発性骨粗鬆症」の除外診断を行ったうえで表3に示す診断基準を用いて原発性骨粗鬆症と診断することを前提としている.1 重視された「既存椎体,大腿骨骨折」これまでの診断基準との最大の違いは「既存椎体,大腿骨骨折」が重視された点,つまり,骨量が低い「状況証拠」より「物的証拠」である,既存骨折の有無が重視されたことであろう.以前より骨密度のみで骨折リスクが説明できないことは周知のことであり,骨密度と独立した臨床的危険因子の解析が進んだ結果,そのなかで最も重要と考えられたものが「既存骨折の有無」であった.骨折種にかかわらず既存骨折の存在による新規骨折の相対リスクは約2倍であると考えられ8),9),そのなかでも椎体骨折が存在する場合,骨密度補正後の新規椎体骨折の相対リスクは約3~4倍,新規大腿骨近位部骨折の相対リスクは約3~5倍と推定される10).さらに,大腿骨近位部骨が存在する場合の新規骨折の相対リスクは2.5~6.48倍と考えられている11),12).また,既存椎体骨折を有する骨量減少例の新規骨折リスクは既存椎体骨折のない骨粗鬆症例の新規骨折リスクの約1.6倍である10).これらのことから,既存骨折のうち椎体または大腿骨近位部骨折があれば骨密度値と関係なく骨粗鬆症とし,その他の骨折がある場合はこれまでどおり骨密度がYAMの80%未満の例を骨粗鬆症とすることとした(表3).低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する.Ⅰ.脆弱性骨折(注1)あり1.椎体骨折(注2)または大腿骨近位部骨折あり2.その他の脆弱性骨折(注3)があり,骨密度(注4)がYAMの80%未満Ⅱ.脆弱性骨折なし骨密度(注4)がYAMの70%以下または-2.5SD以下YAM:若年性成人平均値(腰椎では20~44歳,大腿骨近位部では20~29歳)注1: 軽微な外力によって発生した非外傷性骨折.軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力をさす.注2: 形態椎体骨折のうち3分の2は無症候性であることに留意するとともに,鑑別診断の観点からも脊椎X線像を確認することが望ましい.注3: その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で,骨折部位は肋骨,骨盤(恥骨,坐骨,仙骨を含む),上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨.注4: 骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする.表3原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)